映画評「乙女ごころ三人姉妹」

☆☆☆(6点/10点満点中)
1935年日本映画 監督・成瀬巳喜男
ネタバレあり

成瀬巳喜男の東宝(当時はPCL)第1作にしてトーキー第1作。
 成瀬は小津に近いが小津のような目立つスタイルは余りない。日本の他の名監督に比べると、言わば、個性が乏しいわけだが、庶民の自然な感情を描く作品にはそれ以上ないタイプとも言えるのである。

浅草六区。三味線で流しをする門付け女として働いているお染(堤真佐子)は、駆け落ちした姉・おれん(細川ちか子)と偶然出会う。彼女は内縁の夫が肺病にかかり、二人で彼の故郷に赴くところという。その夜、お染はレヴュー・ガールの妹・千恵(梅園龍子)の恋人を脅迫するヤクザを止めようとして刺されるが、重傷をおして姉のいる駅へ向かう。千恵は駅へと駆けつけるが間に合わず、駅のベンチでは姉を見送ったお染の意識が遠のいていく。

というお話は川端康成の「浅草姉妹」が原作。お染はどうなってしまうのだろうかと心配になるが、千恵も冗談として恋人と心中の話をするなど、三姉妹に共通するどこか絶望的な思いが重苦しい。吝嗇家の母親の存在が姉妹に暗い影を落としているのであり、映画では直接描かれないが、登場人物の細やかな描写から、長女が母親の代わりを務めていたのではないかと想像されるのである。

全編に渡り憂愁の醸成は抜群で、それだからこそ終盤のメロドラマ的な扱いには些か疑問を覚える。そこに現実的に死の影を加えなくてもムードだけで十分だったからである。

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