映画評「ドント・ウォーリー」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2018年アメリカ=フランス合作映画 監督ガス・ヴァン・サント
ネタバレあり

統計を取ったことはないが、最近のアメリカのドラマ映画は、9割かた伝記・実話ものではないかと思う。比較的簡単に観客を感動させることができるので、映画会社が味を占めた結果だろう。しかも、時系列をシャッフルして見せるのが約束的手法となっている。僕みたいな爺は、安易にその手には乗らんよ。

本作は、2010年で59歳で亡くなったジョン・キャラハンなるカートゥーニスト(風刺漫画家)の再生を描く伝記ドラマである。

母親に捨てられ少年のうちからアルコール中毒になり、その同類のような酒好き男デクスター(ジャック・ブラック)の車に同乗したのが運の尽き、彼の居眠り運転で全身麻痺の重傷を負う。
 リハビリを経て電動車いすを自由に動かせるようになると、断酒会に顔を出すようになり、その12のステップを踏むことで断酒に加え、恋人アヌー(ルーニー・マーラ)を得たことも手伝って、自分を捨てた母親を含む他人も自分も許すことが出来るようになり、人気カートゥーニストの道を確立、再生する。

多重の回想形式で、多分一番大きな枠は講演会なのだろうが、断酒会でも当然過去についての告白が要求される。車椅子で倒れた彼を救った親切な子供たちが彼の書いた漫画を見る箇所でも昔の話が語られたようで、性格的に気になって仕方がないのだが(笑)、これは講演会より前とか後とかは余り関係なさそうな扱いになっている。

1951年生まれの彼が事故を負ったのは21歳ということだから1972年、断酒会に入ったのは多分1979年(カーター大統領の任期期間でオリンピックの前年という台詞がある)。それから数年(7年?)かけて完全に再生するわけである。

主人公を演ずるのは1974年生まれのホアキン・フェニックス。40代半ばで20歳から35歳くらいまでを演ずるので、厳しい部分がある。終盤の自然な笑顔などさすがの上手さではあるが。

それはともかく、お話は主人公の描く漫画のようにシニカルな笑いを伴って、なかなか面白いものの、何となく味気ない。時系列の操作くらいで映画的になると思って貰っては困る。況や、ガス・ヴァン・サントのような純文学作家をや。

日本映画は欧米に比べて実話ものが少ない。恐らく、人名に限らず、実名表記を回避したがる文化のせいではないかと思う。

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この記事へのコメント

2021年11月28日 18:23
伝記・実話ものだと、観てる人がほんとうにあったことだと思ってくれやすいというのがありそうなんですね。映画にしてしまってる以上は劇化してるので、そのへんは観る側も分かって見ないといけないんですが、ちょっと最近はそのあたりがボケてきてるのかなって。まだ、現実にあったものを基にして、そこからお話を仕立てましたとはっきり芝居を作ってくれたほうがすっきりするような気もするんですね。

時系列シャッフルはたしかに増えましたね、もうありふれた手法になってしまった。なにがきっかけだったんだろう、何かすごくそれで評価されてヒットもした作品があったんですよね。
オカピー
2021年11月28日 21:16
nesskoさん、こんにちは。

>映画にしてしまってる以上は劇化してるので、そのへんは観る側も分かって見ないといけない

これは仰る通りで、ドラマ系の映画を検索すると、“実話”という文言が付いてい来ることが少なくなく、そういう方々は大体において本当と思っているのではないかと想像されることが多いですね。僕などは、ここは本当だろう、ここは創作だろうと見るのが楽しいくらいですが。

>何かすごくそれで評価されてヒットもした作品があったんですよね。

一時期色々とありすぎた為、もう憶えておりませんが。
 シャッフルすると、何の変哲もないドラマもミステリー化することができるようになって、見た目の複雑さに反して、お話が構成しやすくなるんですよね。僕は20年くらい前から、それは目くらましであるので、一つの時系列で勝負しろと相当前から言っておりますが、一度普及した手法はなかなか手放さないようです。