映画評「聖なる犯罪者」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2019年ポーランド=フランス合作映画 監督ヤン・コマサ
ネタバレあり

2019年度アカデミー賞の国際長編映画賞(かつての外国語映画賞)にノミネートされたポーランド(=フランス合作)映画。なかなか興味深い実話ものである。

少年院を仮出所した若者ダニエル(バルトシュ・ビィエレニア)が行き先の製材所へ行く代わりに教会に入り、中にいた若い美人マルタ(エリーザ・リチェムブル)に自分は聖職者だと嘘をついたことから、本来の司祭が病気で留守をする間教会の司祭を務めることを仰せつかる。
 大きな影響を受けた少年院のトマシュ神父(ルカース・シムラット)の名を騙り、一年前の交通事故で死んだ6人の若者の家族と同時に亡くなった加害者とされる人物の未亡人(バルバラ・クルザイ)との関係を取り持つうち、町民から大きな信頼を得るようになる。
 が、やがて本物のトマシュ神父が連れ戻しに現れ正体がばれてしまう。

というちょっと奇妙なお話で、主題は聖職とは何か、また、信心とは何かであろう。

教養も資格も他の人間を宗教的に感化するのには関係ない。本物の神父以上に彼は町民に良い影響を与えたのではないか? 加害者(とされる人物)が町民の拒否していた町内の墓地に埋められ、未亡人も彼女を敵視していたマルタの母リディア(アレクサンドラ・コニェチュナ)により受け入れられるのだから。
 復帰した老司祭も“我々は信仰から遠いところにいた”と述べている。
 ダニエルは戻された少年院で、敵対する男をこてんぱんにのばす。信心の強さと暴力性に相関関係はないのだ。

その一方で、一度犯罪を犯した人間はどんなに優れた資質があっても聖職者になれない、という規範が厳然と存在する。何とも切なくなるではないか。
 かくして、最終的に、教会批判・社会批判の立場が浮かび上がって来る。

ダニエルの人物像の面白さに立脚する作品であるせいか、カメラは存外特徴的にあらず。そうした中で、格闘場面でカメラが激しく揺れる昨今のアクション映画のスタイルを踏襲しているのがどうにも気に入らない。

ピエル・パオロ・パゾリーニが「奇跡の丘」(1964年)でキリストを革命家にダブらせたように、キリストも案外こんな若者だったのではないか、と本作の作者も想像したのではないか。

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