映画評「声優夫婦の甘くない生活」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2019年イスラエル映画 監督エフゲニー・ルーマン
ネタバレあり

ソ連からイスラエルに渡った声優夫婦を主人公にしたコメディー。
 終わってみると、邦題が一番の傑作であった。というのも、夫婦の夫がフェデリコ・フェリーニのファンという設定に基づき、配給会社の諸君が「甘い生活」(1960年)をもじって付けているからである。

ソ連のユダヤ人のイスラエルへの移住が自由化された1990年、長年ソ連で外国映画の吹き替えをやってきた老紳士ヴィクトル(ヴラディーミル・フリードマン)とその妻ラヤ(マリヤ・ベルキン)はイスラエルへの移住を決断、移住先でも声優絡みの仕事をしようと考えるが、ソ連とは事情が違う。
 細君は一早く夫には内緒にテレフォン・セックスの仕事を見つけ、声優の実力を生かして忽ち人気者になる。旦那のほうは海賊版ビデオのロシア人向け吹き替えの仕事を見つけるが、芸術至高の彼にしてみれば忸怩たるものがあり、結局ロシア人向けの新規映画館を開業しようとしていた事業主に引き抜かれる。その時にヴィクトルが雇い主に反して選んだのがフェリーニの新作「ボイス・オブ・ムーン」。
 その頃夫はいかがわしい(本人に言わせると嘘をついて隠し事をしたのが気に入らない)仕事についた妻に激怒する。細君は夫に対する積年の不満を晴らす為に家を出て別居、出会いを設定して来た特定のファンに会ってみようとする。相手は花束を抱えたなかなかロマンティックな紳士で、彼女は他人の振りをして談笑する。
 映画館のこけら落としの日、ミサイル発射の警報(ヴィクトル自身が吹き込んだもの)が入って来る。彼は映画館を抜け出し店に急行すると、ラヤは休暇を取って映画を見に行ったと言われる。

90分を切る小品というせいもあり小回りが利き、出した布石をきちんと回収、夫婦の愛憎を描いてなかなか木目細かい。吹き替えをフェイクの人生と重ねているようでもあり、声優仕事とオサラバしてこれから本当の生活が始まる、というのが幕切れの意味と僕は理解した。

映画ファンとしては、「スパルタカス」「波止場」「クレイマー・クレイマー」やフェリーニの映画が会話等で扱われて楽しめる。
 当時のソ連では外国映画の吹き替え(1990年当時、日本の映画館では、アニメ映画以外にまだ吹き替えはなかったのではないか? 2000年代に入って映画館でTV同様に吹き替え版が上映されていると知って暫し絶句した)が盛んであったというのも勉強になる。

サダム・フセインが健在だったイラクとの関係が良くなくミサイルや毒ガスの話が良く出て来るのだが、最近観るイスラエルの作品群は、共通して、きな臭いを話を茶化すようなところがある。甚だ興味深い現象と言うべし。

邦題が批判されることが多い。僕もたまにはするが、製作会社を批判することはまずない。何となれば、その背景に題名に対する国民の民度が絡んでいるからである。日本人は題名に内容を求めすぎる。これが第一の問題。シリーズものではないのにサブタイトルが多いことでもそれが理解できましょう。以下省略。

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