映画評「ホモ・サピエンスの涙」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2019年スウェーデン=ドイツ=ノルウェー=フランス合作映画 監督ロイ・アンデション
ネタバレあり

ロイ・アンデション(映画サイトではロイ・アンダーソンと英語風発音に表記しているが、スウェーデン人なので実際の発音に近い表記を僕は採る)は「純愛日記」(1970年)で日本に初お目見えしたが、暫くご無沙汰するうちにタッチが大分変った。
 前作「さよなら、人類」(2014年)の変奏曲のような内容で、前回に比べるとコメディー色は希薄。

人間の営為の悲喜劇を33の挿話に分解して見せているが、前回同様長回しで固定のロング・ショット(各エピソードはワン・カット・ワン・シーンで撮られている)なので、些か冷たい感じがするのは良し悪し。ナレーションと相まって、神様が見ている人間の営為という印象を醸し出しているのは、良い方の効果である。

大体において現在北欧の一般人の行動という印象が強いが、野望を達成できなかったヒトラーや、シベリア収容所の捕虜など、北欧の枠を超えた歴史的事実に則った挿話もある。
 総じて大衆向けとは言い難いが、靴が壊れる女性のほんのちょっとした不幸から捕虜の悲劇まで種々の悲喜劇を織り交ぜることにより、大悲劇と比較されることで小さな不幸の方にさえ幸福感を感じさせる効果があり、絶望だけに終わらせないのは良い。
 ゴルゴタの丘に向うキリストの代りに自分が十字架を背負う夢を見た老人とリンクする形で、神を信じることができなくなる聖職者が何度か登場、音楽のリプライズのような感じになっているのも興味深い。

喜劇度が高く通俗的にはもう少し楽しめるかもしれない「さよなら、人類」より完成度が高い気がする。

リプライズと言えば、ビートルズの「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」が有名。元来はミュージカルでよく使われる用語・手法らしく、再登場を意味する。ポールは戦前のミュージカルにも関心があるので、使ったのだろう。

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