映画評「罪と女王」

☆☆★(5点/10点満点中)
2019年デンマーク=スウェーデン合作映画 監督マイ・エル=トーキー
ネタバレあり

ミヒャエル・ハネケの「ファニー・ゲーム」(僕が観たのはリメイクのみ)程ではないにしても、後味が相当悪いので、余り良い点を指定する気になれない。後味が悪いだけで低い点にするほど青臭くはないわけで、人間を見る上で納得できるところなどあればもう少し★を進呈できるのだが、どうも納得できないのだ。

デンマーク。児童虐待を専門に働いている有能な女性弁護士アンネ(トリーヌ・ディルホム)は、医師の夫ペーター(マグヌス・クレッペル)との間に双子の娘に恵まれ幸福な生活を送っているが、スウェーデンの学校で問題を起こして放校になった先妻との息子グスタフ(グスタフ・リンド)を引き取ることにする。
 最初彼女と少年の折り合いは悪いが、少年と娘たちとの関係が良く、連れて来た恋人?を彼女が愛想よく迎えた辺りから彼の態度も柔和になり、やがて性的な関係に発展してしまう。
 しかし、関係がばれそうになって彼との関係を断つと、少年は再び素行が悪くなって話し合いをもった父親に継母との関係を告白する。それを彼女が断固否定すると、ペーターもグスタフが嘘を言っていると信じるようになる。
 数か月後、八方塞がりになった少年はスウェーデンの山で凍死体となって発見される。

児童虐待問題を仕事にするヒロインがアンビヴァレントにも自ら加害者側の立場になるというお話で、その前に少女に感謝されるエピソードとの対照が非情な効果を上げている。

この映画が新鮮であるとすれば、男性優位社会を批判する映画が多く作られる中にあって、女性を加害者に男性を被害者に据えるという作劇である。しかも脚本や監督は女性たちである。
 序盤アンネが夫や同僚に譲歩を知らない(女王様気質)と異口同音に非難される場面が積み重ねられるが、彼女の性格をここで強調し、彼女が弁護士として或いは母親として或いは恋人として優しさを見せる部分でも、それを通奏低音としてずっと流し続け、最後に再噴火させる、という見せ方になっている。
 この流れが効果的であるし、ヒロインがぎゃふんと言わせられる終わり方になるであろうアメリカ映画とは違う、幕切れにおける人間に対する醒めた態度も評価できる。

しかるに、冒頭で述べたように、後味の悪さを残したまま “人間とはそういうものだ”と理解してはいけないような内容とも思える僕がいて、この映画に関してはそちらに傾く次第。

少年はデンマーク語とスウェーデン語を使っているらしいが、勿論、僕は区別できない。残念。区別できると微妙に面白さが増したかもしれない。

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