映画評「ホテルローヤル」

☆☆★(5点/10点満点中)
2020年日本映画 監督・武正晴
ネタバレあり

桜木紫乃が直木賞を受賞した同名の連作短編集を武正晴監督が映画化した。最近日本では連作短編集の映画化が少なくないが、連作短編集なるものがそれほど多いとも思えないので不思議な感じがする。現代文学に疎い僕が言うことだから当てにならないが。

舞台は北海道の片田舎のラブホテル。美大を落ちた妙齢美人・波瑠が、家を出てしまった母親・夏川結衣の代わりに、父親・安田顕の経営するラブホテルの女将となる。母親がいる時代の挿話として、従業員の余貴美子と夫との強い愛情を巡る物語が紹介される。母親が出て行ってしまうのは、多分、強い愛情で結ばれたこの二人を見てしまったからのような気がする。
 新女将は、また、生活に追われた中年夫婦が憩いの時間を過ごすのも見聞きする。しかし、このような微笑ましいお話だけに済まないのがラブホテルで、親に捨てられた女子高生と妻に不倫されているその担当教師が絶望して心中するという事件が起きる。
 予想されたように、事件以降商売が上がったりになり、父親の病気もあり、遂に廃業することを決める。ヒロインは、ホテルを整理する日にえっち屋こと成人玩具の営業マン松山ケンイチと事に及んで当事者になろうとする。実は初恋の人である松山が妻が気になる余り役に立たないことを知って、しかし、彼女は彼が自分の愛情に価する人物と判って満足するのである。

凡そこんなお話で、ラブホテル関係者を含む人々の群像劇となってい、人生の喜怒哀楽が色々と詰まっているのはよろし。恐らくは “愛情” を主題に描いた映画なので、客のエピソードがもう一つくらい加えてそこへの焦点を明確にしたほうが良かっただろう。

波瑠がラブホテルとおさらばする時に踏切ですれ違った車にはラブホテルを作る前の若い両親が乗っている。ここ以降細工を凝らして時空を交錯させる見せ方をして終幕していくが、その最初の試みである若い両親登場の場面以外は呼吸が余り良くない。代案があるわけではないものの、もっと膝を打たせるような見せ方があったのではないか。過去の実績を考えると、武正晴監督ならもう少し上手く作れたという気がする。

連作短編を、独立したオムニバスではなく、半ば女将を事実上の主役で傍観者とする群像劇にした為に出た弊害が、従業員の余貴美子のフラッシュバック。脇役による正攻法のフラッシュバックは映画言語的にどうにも不自然である。これがオムニバスの独立した一編であれば、従業員が主役になるから収まりが良くなるのだ。

最後のオレンジも決まり切らなったですな。

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