映画評「おもかげ」(2019年)

☆☆☆(6点/10点満点中)
2019年スペイン=フランス合作映画 監督ロドリゴ・ソロゴイェン
ネタバレあり

スペインの監督ロドリゴ・ソロゴイェンが、評判を呼んだという、同名短編のその後を描いて長編にしたドラマ。短編を流用したのか、撮影し直したのは解らない。流用なら変わり種と言えるだろう。作り直しであれば邦画でも「犬猫」(2004年)といった例(こちらは8mm⇒35mmという完全なリメイクだが)がある。

最初の一幕即ち短編の扱った部分は、スペイン国境に近いフランスの海辺で、父親ラモン(離婚した夫)にどこかに行かれた後正体不明の男に目を付けられて困った6歳の少年とその母親エレナ(マルタ・ニエト)の携帯電話による緊迫感溢れる会話を扱っている。

21世紀になって色々と作られて来た電話若しくは携帯電話もののサスペンスかと思って見ていたが、10年後に移行すると、ドラマに変わる。

結局子供はそのまま行方不明になったようで、息子のいなくなった海辺の近くのレストランでエレナは雇われ店長をしている。スペイン人の彼女はスペインの観光客相手になくてはならない存在で重宝がられ、店の同僚ヨセバ(アレックス・ブレンデミュール)を恋人にしている。
 そんなある日、エレナは行方不明の息子と同じ年頃の少年ジャン(ジュール・ポリエ)に声を掛けられる。店が終わった後興味を惹かれて家まで追う。それに気づいた少年はこれを好機に彼女に追い掛け回す。彼にとっては二回りくらい年齢差のある彼女が素敵で恋愛対象らしい。
 彼にとっては疑似恋愛でも彼女にとっては疑似母子の関係だが、友人と夜遊びをした時に酒を飲ませたのが両親をいたく怒らせ、以降彼はまともに外出ができなくなってしまう。心配になった彼女が家に押しかけると、暴力的に追い払われる。
 かくしてヨセバはエレナに店を辞めて他へ移るというかねてからの考えを実行に移すと提案するが、いざ実行しようとするその日ジャンから家族の車から抜け出したという電話がエレナにかかって来る。彼女は心配になって彼を探し出す。元々家出の気がなかった彼は彼女に慰められると家族の許に帰っていく。エレナは、もぬけの殻になった家で元夫ラモンに電話を掛ける。

その前に山のレストランで再会した元夫を痛罵した彼女の心境がよく解らないのだが、ジャンとの関係でひとたび終わり、息子を失わせしめた彼を母性的に赦す気になったというところだろうか? 作者としては、ジャンとの別れに、息子への追慕を精神的に切るという彼女の決意をダブらせたか? そうであれば、ラモンを赦すのも解らないこともない。
 いずれにしても、もう少し曖昧さがないほうが僕の映画観には合う。

ヒロインの疑似親子+疑似恋愛の状況が多少面白く、年の差のある二人の関係を綴る場面場面のムードもなかなか捨てがたいが、僕は、最後に電話による冒頭と類似する場面を出して来たのが気に入ったので★一つ余分に進呈したくなった。
 似たシチュエーションながら、今度は他人の代りに父親が追いかけ、10年前に息子を救えなかった彼女が息子代わりのジャンを救いに現場に行く、という対照的な流れのシーンにしたのが純文学的にして映画的なのだ。対照的な類似というのは映画的に実に刺激的である。

最近はボーっとしているので余り冴えないが、昔はピンと来ることが多かった。「犬猫」評においてマキノ正博が戦前に作った時代劇「血煙高田馬場」を引き合いに出したことがある。それから10年もしてからちょっと調べたら、監督の井口奈己は時代劇が大好きで、マキノのファンと知り、自分の勘に納得した次第。彼女は才能があるからもっと観たい人だ。

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