映画評「BLUE/ブルー」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2021年日本映画 監督・吉田恵輔
ネタバレあり

日本のボクシング・ドラマと言えば「どついたるねん」(1987年)が代表的なところだが、吉田恵輔監督のこの作品もなかなか良い。劇場公開されてからまだ5カ月という新品で、もうWOWOWに出た。新記録ではないか? 

ボクシング・ジムのベテラン・ボクサーの松山ケンイチは戦績はさっぱりだが、実に好人物で新人のコーチングが巧い。後輩の東出昌大は実力派で、松山君の幼馴染・木村文乃と結婚寸前の関係になっている。そこへ勤務先の女性の気を惹く為にシャドー・ボクシングを習いたいという軽薄な柄本時生が入って来る。やる気も何もないのに素質があるようで、あっさりプロ試験に合格してしまう。
 松山君は後輩たちに好かれているが、試合に勝てない彼に不信感を示す者がいたり、柄本君のようにその淡々とした態度を不可解に思う者もいる。松山君は元キックボクサー相手に敗戦、引退して黙ってジムを去っていく。但し、その前に東出君に“いつも負ければ良いと思っていた”と本音を初めて言う。
 しかし、そんな彼の真の優しさを知る東出は “あの人は(精神的に)強い” と、彼からトレーニング・ブックを贈られた柄本君に言う。
 柄本君は第二戦を惜敗し、東出君はチャンピオンになった後防衛戦を目蓋のケガでレフリー・ストップによる敗戦、脳にも問題があって(一応)引退する。松山君は仕事場で今でもシャドー・ボクシングをしている。

幕切れの時点で全員が敗者の立場にあるというのがユニークで、力の抜けたさりげない作り方が実に爽やか。そして、松山のような人間がいること若しくはそれを知ることで、周囲の人物は落ち込むようなところでもやる気を失わずにいることができる、という内容も良い。
 といった次第で、この映画は、少しブルーになっている鑑賞者を元気づけることができるかもしれず、精神衛生上非常に良い作品と思う。

演技陣もタッチ同様非常に力が抜けていて良いが、好演の松山ケンイチ以上に、紅一点の木村文乃の普通ぶりが非常に気に入った。

水彩画の如し。しかし、油絵を好む西洋人は水彩画を余り好まず(喩えです)、最近の淡い日本映画を実力ほど買わない。日本映画の水準がかつてより落ちていると思っているだけに、きちんと作られた映画くらいは評価して欲しいのだが。

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