映画評「はちどり」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2018年韓国=アメリカ合作映画 監督キム・ボラ
ネタバレあり

ここ十数年、韓国映画を評する度に必ずトーンの一貫性に言及することになる。なるべくその点に問題のなさそうな映画を選んで観ているものの、評判が良くても「パラサイト 半地下の家族」のように韓国映画の悪弊を内包している映画も少なくないので困る。
 しかし、今年は結構当たっていて、この作品も全く問題ない。尤も本作は米国の資本も絡んでいるし、大衆映画でもないので、必然とも言える。5年くらいしたらこれが常態になってほしい。

1994年の韓国。中学二年生の少女ウニ(パク・ジフ)は、父権主義の権化のような父親とその庇護で暴力的になっている高校生の兄に苦しめられ、親友もいる学校にも些か馴染めない。その反動が喫煙や万引きといった不良行為である。当時はカラオケや男子生徒との交流も、1960年代くらいまでの日本同様(勿論その頃カラオケはないが、エレキギターを演奏したり、ビートルズやグループサウンズを聴きに行くことが相当しようか)不良の要素とされていたらしい
 ところが、親友と一緒に通う漢文塾の女性教師ヨンジ(キム・セビョク)の自由主義的な考えに慰められると共に、僅かに反旗を翻したりもする。耳の下にしこりが出来て入院したり、後輩の女生徒に昔風に言うならエス(現在的な言い方なら百合族)的な告白をされたり、なかなか忙しい。
 そんな折、漢江の奇跡を象徴していたソンス大橋が崩落し、そこをとおって通学していた姉を心配するが、運良く被害に遭わなかった姉の代りに、プレゼントをくれたヨンジが亡くなったことを後日知る。

大きな流れで見せる映画というより、種々のエピソードの点出の積み重ねで、少女の揺れ動く気持ちを繊細に描いている。冒頭で述べたようにトーン等の問題はなく、タッチは真に世界水準である。

傍流的には、男尊女卑の韓国社会がよく反映されているのも興味深い。
 男性の僕が見ても、こういう社会には不愉快になる。現在の日本は男尊女卑というよりは男性優位社会という感じだが、四半世紀経った現在の韓国はどうなっているだろうか(この間の「野球少女」を見るとまだまだという感じ)?
 しかし、優位であるはずの男性にも子供や女性に対する優しさを表す瞬間がある。父親は娘の病気が不安である。暴力的な兄が姉が橋の事故を免れた時に示す号泣が何とも印象的だ。彼はこの時に変わる。安易に人を判断してはならない。 

主題は、【色々な不条理はあるけれど “世界は不思議で美しい” (ヨンジ)】であろうか。
 ヒロインと同じ世代の、新進女性監督キム・ボラは、この長編第一作に自伝的要素を取り入れた模様。

ハチドリと言えば、小学校の時に買ってもらった「鳥類の図鑑」でケツァールなどと共に最初のページに載っていた鳥。懐かしいなあ。

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