映画評「犬神の悪霊」

☆☆★(5点/10点満点中)
1977年日本映画 監督・伊藤俊也
ネタバレあり

“悪霊”と書いて“たたり”と読ませるらしい。日本映画初のオカルト・ホラーなどと書かれているが、「四谷怪談」など幽霊映画はオカルトじゃよ。

題名からすぐに思い起こす、前年に作られた「犬神家の一族」からミステリー色を薄めたと思えば当たらずと雖も遠からずのムードで、同じく前年に公開されたアメリカのオカルト・ホラー「オーメン」からの多少の影響もあるだろう。これも犬が絡んでいた。

ある因循な村の山で、エネルギー関連会社の社員三人がウラン鉱を発見するが、その時犬神の祠を壊してしまう。それを観た犬タロがその車に吠えてこれもはねてしまう。三人に怒りの目を向ける少年あり。
 翌年、三人の一人大和田伸也が素封家の長女泉じゅんと結婚するが、例の少年が大和田に石を放つ。披露宴の席で同僚がおかしくなり、やがてビルから飛び降り自殺し、もう一人の同僚も犬の群れに惨殺される。
 さらに少年の姉・山内美恵子から手紙を受け取った新妻は、幼馴染の彼女が夫に懸想していたことを知り、憎むようになると、犬神の悪霊に憑かれたのか、異常な言動をするようになり、故郷で死ぬ。
 犬神と関連があるとされる少年の一家が村八分になってひどい目に遭い、やがてウラン関連の事故であるにも拘わらず、一家が毒を撒いたとして一家を惨殺、一人生き残った父親・室田日出男が飼い犬と共に心中する形で呪詛しながら死んでいく。
 犬神は素封家の次女長谷川真砂美に取り憑き、孤軍奮闘の大和田と戦いを繰り広げる。

というお話で、少なくとも祠を壊した男たち、犬神と関連があるとされた一家を直接的に痛めつけた村人たちは全員滅びるという、勧善懲悪のロジックとして正しい結末を迎えているので、幕切れに色々と繰り出して結末に気を持たせすぎる傾向のある欧米のオカルト映画群よりはすっきり見られるところは良い(尤もラストのワン・ショットは曖昧だから、そうとも言えないか?)。

反面、純度が案外に低い。本当にオカルト・ホラーらしくなるのは室田日出男が死んでからである。その直前の毒殺騒ぎではどこかに社会派的な狙いも垣間見えるし、村八分の一家が痛い目に遭うのはオカルトではなく、村の共同幻想的な行為(ただ今吉本隆明著「共同幻想論」営為精読?中)に過ぎない。泉じゅんの異常な言動も共同幻想が生みだしたものではないか?
 そういう意味ではごった煮的で、そのカオス感から生まれるパワーというのも感じないではないが、僕の映画観ではまあまあという程度に留まる。

伊藤俊也は最新作「日本独立」同様、自分で脚本を書いた時の方が、サムライ的で面白い。出来栄えとは違う次元の話でござる。

大和田伸也は親と一緒にいる時に見せられた「水戸黄門」くらいしか思い浮かばないが、こんな映画にも出ていたのか。泉じゅんは懐かしい。

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