映画評「フランクおじさん」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2020年アメリカ映画 監督アラン・ボール
ネタバレあり

アマゾン・プライム配信による日本公開。

脚本・監督のアラン・ボールはTV畑の人だが、サム・メンデス監督の秀作「アメリカン・ビューティー」(1999年)の脚本を書いている実力者。今回はかの作品よりぐっと解りやすい。

1973年のサウスカロライナ州(米国東南部)が主たる舞台。クリークヴィルという保守的な田舎町の高校を卒業した18歳の少女ベス(ソフィア・リリス)は、故郷で浮いている印象を醸し出している文学教授の叔父フランク(ポール・ベタニー)に “自分の人生は自分で決めろ” と言われ、叔父が教鞭を執るニューヨークの大学へ進学する。
 ところが、叔父も参加するパーティーにこっそり出かけた結果、叔父がサウジアラビア出身の男性ウォーリー(ピーター・マクディッシ)と同棲する同性愛者と知り、少し当惑する。
 そんな折彼の父親即ち彼女の祖父が亡くなったという連絡を受け、二人は彼女の母親の飛行機嫌いのせいで車で帰郷することになる。保守的な場所・保守的な家庭故にウォーリーは同行を拒否されるが、忘れ物を口実に追いかけ、しかもフランクの車の故障で三人揃って家へ向かうことになる。但し、ウォーリーはモーテル止まりである。
 葬式の後遺言が公開され、少年時代に現場を発見した父親から彼の同性愛をアウティング(暴露)され、フランクはひどく動揺、少年時代に相手を自殺に追い込んだ湖に向う。嫌々戻された家で彼は、しかし、姉の夫以外に理解してもらえるのである。

今でもアメリカが全国的に同性愛者が認められているわけではないが、今と格段に違って南部では変態とか精神異常者扱いされていた時代に南部出身の紳士が遂に家族に自分の居場所を発見するまでのお話で、父親の死を経て主人公が一番恐れていた事態は、予想外とも言えるどんでん返しを迎える。
 一族が談笑するラスト・シーンは本当に清々しいものを覚えさせる。同性愛に理解を示せない人が義兄だけというのは少しハッピーすぎる感を覚えないでもないが、家族故の愛情と考えれば納得できる。愛は偏見より強し、か。

途中のロード・ムービー的要素では、アラブ人のウォーリーがコメディ・リリーフ的な役柄を負って活躍し微笑ましい。しかし、その彼の生国サウジアラビアでは同性愛者は死刑であり、宗教もしくは聖典を根拠にした偏見・差別はキリスト教国の比ではない。彼には主人公のように帰る場所はないのである。

映画としては、マイノリティーをテーマに悲劇的要素が多いものの、タッチが軽妙で力んだところがないのが良い。序盤、場面の繋ぎがやや字足らず的でリズムが良くないが、主人公の抱える現状が明確になってからはそれもなくなって落ち着く。

佳作と思う。“自分は同性愛に興味がないのでどうでも良い”という意見を読んだが、全くどうでも良くない。本作には、同性愛というマイノリティの問題を超えて、人が自分の居場所を見つけることの大事さを説く普遍性がある。

高校野球の予定をTV欄でチェックしようとしたら全く見当たらない。台風接近が確実なので事前に中止が決まっていたのだ。フランク(率直)に言って、おじさんはビックリした.。

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