映画評「ケンネル殺人事件」

☆☆★(5点/10点満点中)
1933年アメリカ映画 監督マイケル・カーティス
ネタバレあり

本格推理の分野に大きな足跡を残し、アガサ・クリスティにも大きな影響を残した筈であるS・S・ヴァン・ダインのファイロ・ヴァンスもの第6作の映画化。
 ウィリアム・パウエルがヴァンスに扮するシリーズとしては第5作で、このシリーズで私立探偵役として定評を得たパウエルはマーナ・ロイと組んで夫婦探偵もの「影なき男」シリーズにも出演した(全て鑑賞済み)。

中国美術の収集で知られる大富豪アーチャー・コー(ロバート・バラット)が密室化した自室で死体で発見される。ヒース部長刑事(ユージーン・パレット)は即座に自殺と判断するが、同行するヴァンスは死体に不審な点を発見、検視官の観察に鑑みて他殺と断定する。
 この二人にマーカム地方検事(ロバート・マクウェイド)を加えた三人が捜査を進めるうち、犯人の可能性があった被害者の兄ブリスベーン(フランク・コンロイ)も死体となって発見される。
 彼を含め、姪ヒルダ(メアリー・アスター)、秘書レイモンド(ラルフ・モーガン)、中国人の料理番(ジェームズ・リー)、被害者を犬を殺したと決めつけるヒルダの婚約者マクドナルド卿、隣人の女性などが犯人と目される。

原作が古い有名なミステリーで、映画自体も古いので、やや変化球とも言える犯人設定・犯行の詳細などを明かしても大きな問題はないと思うが、それを書かなくても映画評を成立させる作品内容なので伏せておきましょう。

アマゾン・プライムにテンポがスローという意見があったが、僕の印象はまるで逆。それはそうであろう、普通のスピード読めば3時間は優にかかる内容が73分という短尺で処理されるのだから。本格ミステリーはやはり小説で前後を確認しながら進むくらいのスピードが丁度良いので、この映画は内容をしっかり理解し堪能するのは速すぎるのである。実際僕には置いてけぼりを喰らうところがあった。それが難点と思う。
 序盤のドッグショーをめぐる10分近い部分はスローと言えるが、容疑となる複数の人物を見せる部分であるからこれくらいで丁度良いのではないだろうか。

これまでの映画評で何度も言ってきたように、最近の映画はテンポが速いのではなく、映像を頻繁に切り替えて速く見せているだけの作品が多い。それを勘違いしてはいけないのだ。

昨年の国会でコロナ対策について、国会で閣僚が“スピード感”と言ったところ、野党のどなたかが“スピード感では困る。スピードを速くしないと”と仰った。極めて正しい日本語の感覚でござる。映画も同じで、スピード感と実際のスピードは違う。とにかく、現在日本人は“~感”を使い過ぎるが、“~感”でないと成立しない言葉も多いので注意が必要。多分、猫も杓子も使う“世界観”も”世界感”の意味で使っているのだと思う。ファッション・ショーに世界観などあるわけがないのだ(稀にあるかもしれない)。

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