映画評「ペイン・アンド・グローリー」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2019年スペイン=フランス合作映画 監督ペドロ・アルモドバル
ネタバレあり

ペドロ・アルモドバル監督の最新作(公開待機中のものを除く)は自伝的映画あるい私小説映画である。紹介の文章を読まずとも、彼の作品をずっと観て来た人ならピンと来る内容である。

ベテランの映画監督サルバドール(アントニオ・バンデラス)が様々な肉体的疾病を抱え、それが精神に及んで引退同然の日々を自宅で過ごしているある時、昔の作品が映画祭で上映されることになるが、当時と同様に主演した男優アルベルト(アシエル・エチェアンディア)と口論してしまい、ヘロインに逃避する。
 やがて反省し、今や演劇に活路を見出しているアルベルトに、自伝的内容の一人芝居を任せることにする。この芝居を見た中年男性フェデリコ(レオナルド・スバラーリャ)がサルバドールを訪れる。ヘロイン禍絡みで大昔に別れた男性の恋人である。アルゼンチンに渡った彼は、今や二人の青年男子を息子を持つレストラン店主と語る。
 知人女性メルセデス(ノラ・ナバス)のケアでヘロインを断ち精神治療などに専念することを強い意識で決心した彼は、やがて「はじめての欲望」という自伝映画を作り始める。

という内容で、折に触れ母親ハシンタ(若い頃ペネロペ・クルス、死の直前フリエタ・セラーノ)との日々が回想され、その中で少年の彼(アシエル・フローレス)が洞窟の家を飾り立てた若い大工エドゥアルドに初めて恋心を覚える様子も挿入される。半世紀後サルバドールが大工が残した彼自身の少年時代の絵を画廊に発見するといったエピソードがなかなか作品的に美しい。

例によって鮮やかな色使いで、画面の満足度は高いが、同性愛や麻薬絡みなどお話としては必ずしも僕の好みではない。しかし、アルモドバルのいつもの内容だから抵抗があるわけでもない。

そんな中で僕が感心したのは、AllcinemaでKE氏(この人とは一致する意見も多いが、真逆の意見も結構あるので面白い)が指摘するように、それまで回想と思っていた場面が、実は「はじめての欲望」の撮影風景だったという種明かしである。つまり、本作自体が「はじめての欲望」という作品そのものであるというメタフィクションとしての立場を表明するわけで、この見せ方の鮮やかに感心させられたのである。この手のアイデアは近年少なくないが、これほど鮮やかな例はなかなか例がない。

懐古調で多分に「ニュー・シネマ・パラダイス」(1988年)の気分がある。

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