映画評「アンティークの祝祭」

☆☆★(5点/10点満点中)
2018年フランス映画 監督ジュリー・ベルトゥチェリ
ネタバレあり

一月前に観た幻想的コメディー「今宵、212号室で」では確執の相手が夫だったキアラ・マストロヤンニが、今度は母親を確執の対象とする、これもまた一種の幻想譚である。但し、主人公はその母親である。

80歳絡みで認知症の問題も多少抱えているらしい富豪老婦人クレール(カトリーヌ・ドヌーヴ)が今日が自分の最後の日という天啓を持ち、家族にまつわる思い出もある無数のアンティークをガレージ・セールで処分することにする。一昨日のダイアン・キートンの比ではない。
 それを伝え聞いた娘マリー(キアラ)も久しぶりにやって来る。母娘の確執の原因は、一つの指輪をめぐる他人から見れば他愛ない贈与の問題であるが、娘にとっては人生の価値観を否定されるに等しいものであるからそう単純ではない。

アンティークを狂言回しに、夫が経営していた採石場で愛する息子マルタンが事故死、それを受けてクレールが憎み出した夫の急死の際に助けようとしたか・・・という問題のある過去も浮かび上がって来る。これも確執を悪化させる原因である。
 時間が経って狂騒的なセールが終わった後、クレールが街角で倒れて病院へ運ばれる。しかし、その病院も抜け出し、まだまだ大量のアンティークのある我が家へ戻り、事件が起きる。

その “事件” の内容は言わぬが花なので伏せておくが、全体の調子を考えた時に違和感がある。その調子というのは、本人が過去の自分を見るという形で時間の移動をしていく手法が生み出す文学的な落ち着いた香りである。
 この手の見せ方はここ20年くらい増えて来たものの、ここまで多用した例を僕は他に知らず、老クレールの内面の混乱を象徴する"別の人物が亡き息子に見える"というショットの扱いを含めて、なかなかしっとりとした調子なのに、最後だけが些か違うのである。

いずれにしても、アンティークに囲まれて家族に対する複雑な思いを長いこと引きずって来た老婦人の心象風景を描いた映画と言って良いと思う。

本当の母娘共演。しかし、キアラは父親(マルチェッロ・マストロヤンニ)に似ているねえ。個人的には母親に似た方が良かったと思うねえ。

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