映画評「ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領から日本人へ」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2020年日本映画 監督・田部井一真
ネタバレあり

5か月前にエミール・クストリッツァ監督「世界でいちばん貧しい大統領 愛と闘争の男、ホセ・ムヒカ」を観ているので相当損をしている部分があるが、観ていない人には得るところが多いだろう。観ていても得るところと思われることを記してみる。

上述作でも指摘したように、ウルグアイの元大統領ムヒカは、ジョン・レノンの「イマジン」に通ずる精神を持つ。即ち仏教(禅宗)の精神、解りやすく換言すれば【足るを知る】の精神である。 現にこの作品に “吾唯知足” と書かれた蹲踞(つくばい)のある龍安寺が出て来る。所有の欲を持たずば人は自ずと幸福になるというのである(僕は「イマジン」の possessions を所有欲と訳す)。
 僕は、ずっとこの精神で生きて来た。無理に貧しく生きようとは思わないが、持っている金の中で生きられるよう生計を成せば良いという考えである。それが出来るのであれば、ムヒカの仰るように、幸福感を感じられるのは当たり前なのだ。

現在の日本は、昔の素晴らしい伝統を部分的に維持する一方、今以上の発展を求め続けている。これは良いことなのか?という問いを彼は我々に提示する。“自分が生きている間に、自分の求める世界は実現しない。しかし、自分は種を蒔く人であり、やがてその一部を拾って撒く人が出て来るだろう”と言う。ジョンは自分を”夢見る人”と言い、ムヒカは”種を蒔く人”と言う。似た意識ではないだろうか?

映画的にはクストリッツァ作品のほうに面白味があるかもしれないが、本作が巧いと思えるのは、ムヒカが若い時に移民の日本人コミュニティの傍に住み、彼らから種などを譲ってもらい花を売っていた花売りであったという事実を、映画の後半日本各地を訪れるムヒカと関連付け、見事に花咲かせたことである。

監督をした田部井一真は、TV関係者らしいが、TVの仕事で訪れたムヒカの発言に影響された為、その後に生まれた息子にムヒカのファースト・ネームであるホセ(歩世)を与えた。それを踏まえて、生まれたばかりの子供を写したホームビデオから始まるのも、構成的に面白い。

日本における不和の家庭の半分くらいは、足るを知れば、幸せになれると思う。幸・不幸は多く意識の問題だ。

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