映画評「一度も撃ってません」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2020年日本映画 監督・阪本順治
ネタバレあり

阪本順治監督は時々嬉しい傑作を発表してくれる。些かマニアックな内容なので万人受けしないかもしれないが、本作は正にそれである。

ハードボイルド作家として御前零児というペンネームを持つ老人・市川(石橋蓮司)の裏の顔は、元刑事のフィクサー石田(岸部一徳)から紹介されたターゲットを仕留める殺し屋である。実は彼は若い男・今西(妻夫木聡)に代行して貰っている。

というお話が、酒場“Y”を拠点として語られる。「探偵はBARにいる」シリーズに通ずる構成だが、ユーモアを随所に配置しながら、ハードボイルド映画としてのムードはもっと本格的で、実に嬉しい。

ユーモアと言えば、漫才トリオのような、桃井かおり扮する元ミュージカル女優を囲む市川と石田の三人組は、学生運動時代からの知り合いという設定。桃井かおりや石橋蓮司の若い頃の出演作を意識したような気がしないでもない。

老作家が自分が引き受け、若者(でもないが)に代行させた事件の詳細を色々と調べ、それを小説に書くという設定が実に気が利いている。
 光文社(珍しくも実名で出て来る)のベテラン編集者・児玉(佐藤浩市)やペーペー編集者・五木(寛一郎)を狂言回し的に扱い、これも面白味に貢献している。例えば、初めて自ら殺し屋の役目を果たそうとして緊張している市川が、要らぬことを言う五木を “野坂” と(間違えて)呼び捨てにするのは、勿論五木寛之と野坂昭如という同時代の作家二人を意識した台詞で、笑わせる。この辺りは外国人にはなかなか解りません。

本作でも出て来るように、最近はちょっとした言葉もパワ・ハラ扱い。昔部下の女の子に何か注意したら、“そんなことを言うなら、辞めますよ”と言われて、当惑した。これは部下によるハラスメントではないかいな?

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント