映画評「パブリック 図書館の奇跡」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2018年アメリカ映画 監督エミリオ・エステヴェス
ネタバレあり

ドキュメンタリー「ニューヨーク公共図書館~エクス・リブレス」と併せて見ると面白い図書館を巡る騒動を描いた人間劇である。男優エミリオ・エステヴェスの主演も兼ねた脚本・監督作。

シンシナティ。エステヴェスは公立図書館の図書館員で、匂いを理由にホームレスを強制退去させたカドで他の数名と共に訴えられている。かく少なからぬホームレスが日常的に図書館にやって来る或る寒い日、避寒シェルターもいっぱいである為ホームレスたちが寒さを理由に退出を断る。図書館員たちは対応に苦慮するが、やがてエステヴェスは彼らに同情的になって認める。
 しかるに、ルールに則って警察に報告された結果、アレック・ボールドウィンを交渉人とする警察が絡み、彼を訴えた郡検察官であり次の市長候補クリスチャン・スレイターも名を売ろうと駆けつけて来たことから、マスメディアを巻き込んで大騒ぎになる。

というお話で、冒頭に挙げたドキュメンタリーと共に図書館が公共の施設として本やメディアを提供する場として以上の存在価値について考えさせる内容となっている。
 映画としての完成度に些か問題があるが、その狙いや良しである。

奇跡がないと仰る方が多い。しかし、アメリカは日本と違って物事の解決に暴力が伴いがちな場所であることを考えれば、官憲による身体的暴力なしに事件が解決したことが奇跡ということでありましょう。
 その解決策が、関係者が全員全裸になって官憲を待っているというのは些か芸がないし趣味も良くないが、西洋人は実際にやりかねないし、また、他の映画にもよくこの類のアイデアがある(1966年のフランス映画の秀作「まぼろしの市街戦」の幕切れ)ことを考えると、尋常ならぬシチュエーションにおける裸を可笑しがる風潮があるような気もする。

主題は、公共の福祉という、実はなかなか微妙な問題への言及である。主人公は最初にホームレスを追い出した罪で訴えられるわけだが、匂いに迷惑を被る(迷惑どころか匂いで健康を害す人も実はいる)他の利用者もいることを考えると、権利と権利のバッティングであり、この問題は一筋縄では行かない。

排除で訴えられた人物が今度はホームレスを守る立場になって同じ検察官から文句を言われる。あるいは、彼こそ本来人質であるのに彼が人質を取っているように思われる辺りを含めて、官憲やマスメディアへの風刺となっている。

図書館戦争」という邦画はあるが、図書館を全編舞台にした作品は少なく、問題提起としても興味を惹くものがあるので★一つプラス。

邦題への批判をする人が多いが、多くの場合は、配給会社の背後にいる一般大衆も批判していることになる。それを承知で言うなら結構だが。僕はそれより「魔法にかけられて」「敬愛なるベートーヴェン」のように日本語として成立していない邦題が気になる。「魔法にかけられて」は間違いではないと他の例を引っ張ってきて擁護する人がいるが、適切な引用ではないので、やはり間違い。必要であれば、詳しく説明したいと思う。

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