映画評「ディック・ロングなぜ死んだのか?」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2019年アメリカ映画 監督ダニエル・シャイナート
ネタバレあり

タイトル通りの内容を扱ったブラック・コメディーである。日本人には面白味が解らないところがあるし、アメリカ人でも品の良い方は眉をひそめるかもしれない。IMDbでは、後者を主たる理由とする 6.3 という平均得点なのかもしれない。

ある田舎町。ピンク・フロイトというふざけた名前を持つ素人バンドの三人が練習後 “はめを外し” に出る。 殆ど意味を成さない数カットを挟んだ後、 そのうちの二人ジーク(マイケル・アボット・ジュニア)とアール(アンドレ・ハイランド)が残る一人ディック・ロングを病院にまでこっそり運ぶシーンに突然移る。
 車の持主ジークは翌朝6歳くらいの娘シンシア(ポピー・マニンガム)を学校へ連れて行く為に血を落とすのに必死になるが結局うまく果たせない。いつもと違って助手席に乗せて誤魔化すが、 入った店にたまたまいた女性警官ダドリー(サラ・ベイカー)に娘が父親が財布を拾ったと報告、彼は事前に免許証だけを抜いた財布を渡す。
 どうしても後部座席の血の落ちない車をジークとアールは「サイコ」よろしく沼に沈めようとするが失敗してそのまま帰宅。車を失くしたことにして妻リディア(ヴァージニア・ニューコム)に報告するが、豈図らんや妻が警察に連絡した為に、彼らが必死に隠そうとした “事” が露呈することになる。ディック・ロングが死んだ理由こそ彼らが隠そうとしたことに他ならない。

これが最初に彼らが言った “ハメ外し” を指すわけで、ここに至ってアメリカ人であれば全員が解るディック・ロングの意味に爆笑となるという次第。ディック・ロングは馬のディック・ロング(長い陰茎)にやられて死んだのである。馬との獣姦を長いこと楽しんでいたという事実は、そのコミュニティーにもはやいられないことを意味するから、彼らは必死に隠さざるを得ない。

日本と違って獣姦をする人が割合多いと聞くアメリカだからこそ成立つお話で、真面目に扱ったらグロテスクになる内容を女性警官と女性署長をからめて「ファーゴ」(1996年)に似たとぼけたブラック・ムードで楽しませる。
 二人の獣姦男があがけばあがくほど泥沼に嵌っていく可笑し味が持ち味であるが、それを支えるのが娘の純真な思いや妻の素朴な恐怖である。これが大きな効果を発揮してとぼけた味わいが大いに醸成された。

佳作未満だが、ブラック・コメディーがお好きなら一見する価値がある。

死体を巡るブラック・コメディーの傑作「ハリーの災難」ならぬ「ディック・ロングの災難」。

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