映画評「おらおらでひとりいぐも」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2020年日本映画 監督・沖田修一
ネタバレあり

オフビートな映画を作る沖田修一監督が、若竹千佐子の芥川賞受賞作を映画化した作品。相変わらずとぼけている。

70代になって夫に先立たれた埼玉県の老主婦・桃子(田中裕子)は、息子とは暫く音信不通、娘は近所にいて珠には寄るようだが、孤独をかこつ日々。夫(東出昌大)の死後図書館によく通うようになった勉強熱心なお婆ちゃんだが、頭の中に余り使わなくなっていた故郷の岩手弁が出て来るようになって認知症を心配するようになる。図書館と並んでよく行くのは医院で、順番待ちの間にも、折に触れ、結婚を強制されそうになって故郷岩手を飛び出して東京で働き始めた飲食店で夫と知り合う前後の若い日々(蒼井優)を思い返し、孤独を克服していく。

大体このようなお話で、沖田監督らしいのは、彼女の内面が“寂しさ1~3”や“どうせ”という形で男優四名(濱田岳、青木崇高、宮藤官九郎、六角精児)により見せられることで、おとぼけ感満杯である。しかし、少し煩くなった。
 それに加え、若い時や幼年時代のヒロインが、単純な回想の中だけではなく、別の自分として登場してくるところもあり、全編殆ど桃子で構成されているということになる。
 別の時代のヒロインが現在のヒロインの前に現れるところはもう一人の自分であると同時に変則的な回想でもあって、二重の回想により成り立っているという珍しい作り方として、注目して良いのかもしれない。

反面、こうしたコミカルな作り方であるにもかかわらず、孤独を深めていた老人を描いて、特に子供との関係において切なくなる場面も少なくない。音信不通の息子への思いや、逆に幼児期の娘への対応に関する後悔など、彼女より一回りくらい若い僕もじーんとしてしまう。
 ただ、やはり男優による内面描写は少々くどく、僕の趣味と合わないところがあって楽しめ切れない。

最近の映画で、若い時と老齢期の役者が全く違うタイプで“何だかなあ”と思うことが多かったが、本作の蒼井優と田中裕子は骨相的に近いと思う。骨相的に近いせいか、声も割合近い。

ヒロインの上京は前回の東京五輪の時だった。今回の五輪は、僕のようにじゃんじゃんやれというのは少数派だが、しかし、普段差別はダメと言っている系列の人々が、大した科学的根拠もなしに外国人差別言論を弄している。タクシーをハイヤー代替とする要請に関する全国自動車交通労働組合総連合会の反応で出て来た言葉は、政治家なら撤回しろと言われるレベルの差別ではないだろうか。感染の恐怖を言うなら、無条件にやって来る外国人を乗せるわけではないのだから、普段乗せている日本の乗客と同じ程度と考えるべきで、実際一人のタクシー運転手は“日本人乗客でも関係者(外国人)でも自分が感染する恐怖は同じ”という意見を放っている。これが正しい考え方だ。

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