映画評「クラッシュ」(1996年)

☆☆★(5点/10点満点中)
1996年カナダ=イギリス合作映画 監督デーヴィッド・クローネンバーグ
ネタバレあり

デーヴィッド・クローネンバーグは面白い作品を作るが、真に感心した作品は余りない。面白かったのはリメイクの「ザ・フライ」(1986年)、総合的に優れていたと思ったのは「ヒストリー・オブ・バイオレンス」(2005年)というところ。
 本作は、ニューウェーヴSFで知られるJ・G・バラードの同名SFを、非SF映画として映像化した作品。

CFプロデューサーのジェームズ・スペーダーが妻デボラー・カーラ・アンガーと空港へ移動中に交通事故に遭遇する。妻は無事だが、相手の男性は死亡する。空港専門の病院に入院した彼は、同じく入院している相手男性の妻ホリー・ハンターと親しくなる。また、謎の男性イライアス・コティーズが彼に深い関心を覚えたらしく接近して来る。男は強い異常性を帯びている。
 退院したスペーダーとハンターは一緒に、コティーズが行うジェームス・ディーン死亡事故の再現ショーを見学、やがて異常な彼に引きずられるように交通事故フェティシズムに没入していく。

という奇妙なお話で、最後はスペーダーが妻を追いかけて事故を起こさせ、負傷した彼女と愛し合う。もう変態ですな。

交通事故を一種のセックス的快感とするのはまず記憶にないが、性と死を関連付ける変態セックスのバリエーションである。交通事故を起こすまでのスリルが前戯で、事故が本番(のエクスタシー)なのだろう。

心理学的に少々興味深いものがあるが、事実上のポルノで、映画としての手応えは僕には限定的。SFではないが、大量の自動車走行を捉えるロング・ショットにSF的感覚あり。

一種の死姦でしょうか。

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この記事へのコメント

モカ
2021年07月14日 20:32
こんにちは。

これは未見ですが、J・スペイダーがマギー・ギレンホールと共演した変態映画「セクレタリー」は好きです。
J・スペイダーはこの頃変態専門?だったんですかね。(笑)
オカピー
2021年07月14日 22:15
モカさん、こんにちは。

>変態映画「セクレタリー」は好きです。

逆に、僕はこちらが未見です。
映画サイトの梗概をちょっと斜め読みすると、どこか似たような感じのお話ですね。

>J・スペイダーはこの頃変態専門?だったんですかね。(笑)

売れっ子になった作品が「セックスと嘘とビデオテープ」なので、性絡みの作品が多くなったのかもしれません。
2021年07月17日 20:13
「戦慄の絆」は、ジェレミー・アイアンズの双子演じ分けが見られるだけでも値打ちがあると思っています。
「ヒストリー・オブ・バイオレンス」も、役者がよかった記憶がある。
オカピー
2021年07月18日 16:46
nesskoさん、こんにちは。

何だか、怒られているような気がします(笑)

クローネンバーグやデ・パルマのようなタイプは、余り褒め過ぎないのが映画評として品が良い、という思いは若い頃から一貫して持っておるのです。

>「戦慄の絆」は、ジェレミー・アイアンズの双子演じ分けが
>見られるだけでも値打ちがあると思っています。

そうですね。
 この映画は映画館で観ましたが、実はよく解らなかった^^;
 音楽にも詳しい映画評論家・河原晶子が褒めていた記憶があります。彼女は、こういう妖しい映画が好きでした。キネ旬にも名前がなく、ご健在なのかと思って調べたら、昨年の11月に亡くなっていました。合掌。

>「ヒストリー・オブ・バイオレンス」も、役者がよかった記憶がある。

左脳人間の僕にも解る映画。これは映画的に感心しました。
助演のウィリアム・ハートが評価されたようですが、主演ヴィゴ・モーテンセンが良かった。
2021年07月18日 19:09
>クローネンバーグやデ・パルマのようなタイプは、余り褒め過ぎないのが映画評として品が良い、という思いは若い頃から一貫して持っておるのです。

これは同感です。どちらも一部に妙に持ち上げる人がいるせいで、なんか変な感じがすることは多いです。クローネンバーグは「クラッシュ」でカンヌ映画祭で賞とったらしいですけれども、基本B級というか、あんま持ち上げるのは変だと思うんですよね。
オカピー
2021年07月19日 18:38
nesskoさん、こんにちは。

>クローネンバーグは「クラッシュ」でカンヌ映画祭で賞とったらしい

Wikiには審査員賞を受賞とありますね(余り興味なし)。

ここ20年くらいカンヌでは社会派かセミ・ドキュメンタリー(大概の社会派がセミ・ドキュメンタリーなのですが)が強いですが、これはそれ以前の作品ですし、審査員賞ですから題材の面白さが受けたのかな?

淀川さんがよく“褒めなくても良い映画を褒めるひねくれ者がいる”とか仰っていましたが、どういうタイプの作品を指していたのか、知りたいですね。