映画評「Girl/ガール」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2018年ベルギー=オランダ合作映画 監督ルーカス・ドン
ネタバレあり

1999年の「ボーイズ・ドント・クライ」以降性同一性障害の人々を描いた映画がぼちぼち作られ、最近では「アバウト・レイ 16歳の決断」がある。上記二作品は自分を男性と感じている女性が主人公だったが、本作は逆である。
 ところで、映画サイトの紹介ではトランスジェンダーという文字しか出て来ない。性同一性障碍とトランスジェンダーは厳密には違うそうだが、その類を紹介するサイトを訪れても結局よく解らない。とりあえず言葉の問題として、僕は性同一性障碍に統一して書いておく。

性同一性障碍のヴィクトール(ヴィクトール・ポルスター)はララと改名して、バレエ学校でバレリーナを目指して懸命に頑張っている。どういう事情か母親はいないようで、父親や他の親族も彼あるいは彼女の思いを十分理解しバックアップしている。
 ホルモン療法で暫し肉体の女性化を目指すか、なかなか効果の出ない現状に焦って、理解のある父親マティアス(アリエ・ワルトアルテ)とも衝突することもあり、やがて自ら体にメスを入れて病院に運ばれる。

映画はこの後明るい表情で駅のプラットホームかコンコースを歩くララの姿を映して終るが、ずっと時間軸を一つに描いて来たので、退院後の姿と思って理解すれば良いのだろう。着実に未来に向けて進んでいこうという決意の表情なのだろうか? 

学校でララが性同一性障碍者と認識されている一方、シャワーを決して利用しないのを見て、僕は一般の学校とバレエ学校の二つがあるのかと当初理解したが、後段の描写から判断する限り、通っている学校は一つのようだ。説明的ではない映画の欠点と言えば欠点である。その前に、バレエ以外に勉強も教えているバレエ学校なる存在(日本にはないのではないか)を理解していない当初の知識の問題かもしれない。どうもすみません。

他者特に父親との関係を丹念に描いて実感を伴う。これほどきちんと理解しようとする父親は珍しいと思うが、それが為に口を挟んで来る父親を疎ましく思うこともあるララは、しかし、その煩さを心配する余りと理解して、疎ましく思っても憎くは思わない筈である。

ドラマとして非常にしっかり作られているが、内容ではなく映画として環境描写が一切ないところに少々不満を感じる。人しか見ていないと観客は、少なくとも僕は、息を抜けないのだ。

ララを演じるヴィクトール・ポルスターは性同一性障害とは関係ない男性ダンサーと聞くが、立派な演技と思う。それ以上に女性としか思えない様子や振る舞いは大したものだ。

このタイトルで思い出すのはビートルズの同名曲。ジョン・レノンの歌唱が好きだ。しかし、去年からよく視聴するようになった YouTube番組“みのミュージック” での視聴者投票によるヴォーカル部門(洋楽・邦楽を一緒にしたのが画期的。しかし、日本人の選出が多すぎないか)でジョンがフレディ・マーキュリーの後塵を拝した。非常にハイエンドな次元だが、代替可能性の論点で、これは納得できない。みのさんも(異論・反論を唱えていないものの)どこか納得できないような印象を醸し出している。

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この記事へのコメント

モカ
2021年07月12日 11:22
こんにちは。

>ララを演じるヴィクトール・ポルスターは性同一性障害とは関係ない男性ダンサーと聞くが、立派な演技と思う。それ以上に女性としか思えない様子や振る舞いは大したものだ。

 同感です。 彼の存在がなければこんなに説得力のある映画に仕上がらなかったでしょうね。
(「ベニスに死す」のビョルン・アンドレセンのその後のようにならないように願いますが・・・)

 みのミュージック 
うちも去年くらいにまとめて観てました。ああいうランキングは
どういう人達を対象に調べているかでかなり違いますよね。
みの君は八方美人というか好きなミュージシャンが多すぎるのか、「この人はもっと上位に行っていいと思う」が多すぎて上位10位までで50人くらい対で並びそうですね。という事は結局ランキングなんてあんまり意味ないというか・・ま、「お遊び」でしょうね。

ジョンの ”ガール” 私も大好きです! あの口角から涎をたれてそうな歌い方がたまりません(笑)
オカピー
2021年07月12日 21:40
モカさん、こんにちは。

>「ベニスに死す」のビョルン・アンドレセンのその後のようにならないように願いますが・・・

昨年現在の姿を映画で観ましたが・・・

>みの君は八方美人というか好きなミュージシャンが多すぎるのか

洋楽・邦楽問わず、本当によく聴いていますよ。自分もミュージシャンなので忙しいだろうに。
意見を聞いてもバランス感覚があって、僕は感心する事しばしば。

>結局ランキングなんてあんまり意味ないというか・・ま、「お遊び」でしょうね。

何のランキングもそういうことであります。
 しかし、その一々に対するみの君の発言はなかなか適切で、その順位より、彼の意見を、余りよく知らない海外勢のアーティストやアルバムを聴く上で参考にするようになりました。

>ジョンの ”ガール” 私も大好きです!
>あの口角から涎をたれてそうな歌い方がたまりません(笑)

本当に。誰にも真似できない歌唱と思います。
 例えば、ビートルズ系譜のバンドで、ジョンに似ていると言われることのあるオアシスのリアム・ギャラガーにも、ああいう色気はありません。
浅野佑都
2021年07月13日 11:50
 「Girl」のタイトルバックが一番最後に出てきたのは実に効果的で胸を打ちました! 

>ララを演じるヴィクトール・ポルスターは性同一性障害とは関係ない男性ダンサーと聞くが、立派な演技

更衣室でクラスメイトから、「あんたのパンツの中身を見せてよ!」とからかわれ、「意地悪ね」という、戸惑いと怨みの混じったような微苦笑を浮かべるところなど、どこから見ても本物の女性としか思えなかったですね!

他にも主人公を、自分の中の女を確認するために、行きずりの恋に走らせるところは上手いと思いました。
生理現象とは言え、現実の性である男を再確認させられてしまうわけですから・・。

>他者特に父親との関係を丹念に描いて実感を伴う

一見、理解のあるように見える父親も、真の意味で主人公の苦悩をわかっていないことがわかります。
彼女が欲しいのは、シスジェンダー(トランスジェンダーに対し、こちら側のという意味の新語)である父親からの心配ではなくて共感。
それがラストの病室の場面で初めて父にも理解できたのでしょう。

「ベニスに死す」のビョルン・アンドレセンは北欧系で骨格もがっしりしてて日本人から見ると美少年というより美青年ですが、ヴィクトール君のほうは体つきもほっそりしててノーメイクでも、もともと女顔ですからね・・。
どちらの映画も、モカさんの言うように主人公そのものが作品となっていましたね。

ただ、個人的には、マイノリティを必要以上に細かく色分けするのは良くないと・・。
人間なんて、一人一人皆違うわけですから・・。神の前ではすべてがマイノリティでは?。

アマゾンオリジナル作品の「フランクおじさん」も、僕が現在ハリウッドで最も好きな俳優のポール・ベタニー主演で味わい深い一本となっています...
モカ
2021年07月13日 16:25
こんにちは。

>意見を聞いてもバランス感覚があって

 そつがないというか、映画でいえば日曜洋画劇場の淀川さん的スタンス? 愛があってほめ上手で知ったかぶりをしないのでうるさ型オールドロックファンにも受けが良いでしょうね。

 「みのさん」って書くと「みのもんた」と間違える人が・・ここには来ませんか・・・笑
 


 
モカ
2021年07月13日 20:04
追伸です。
「フランクおじさん」
リストに入れておこうと検索したら、おっとどっこい、もう観ていました。
 配信で適当に観ていると観終わって、「今の何ていう映画?」
「えっ、知らんわ、なんやろ?」となりがちです。 
すっかり忘れていましたが、少しほろ苦いスパイスも効いていていい映画でした。
忘れてたくせに言うのも何ですがお勧めです。
オカピー
2021年07月13日 21:23
浅野佑都さん、こんにちは。

>現実の性である男を再確認させられてしまうわけですから・・。

だからそそくさと出て行ってしまう。女性として興奮しても男性器が機能するというのが面白いデスね。

>理解のあるように見える父親も、真の意味で主人公の苦悩をわかっていない

これは当事者以外はなかなか難しいわけでして、正に共感という表現がふさわしいですね。

>マイノリティを必要以上に細かく色分けするのは良くないと・・。
>神の前ではすべてがマイノリティでは?

全く同感ですねえ。

>アマゾンオリジナル作品の「フランクおじさん」

7月24日から8月7日まで五輪でスケジュールがいっぱいですから、その後になるかなあ。不調だったWOWOWが観るべき(観たいとまでは言い難い)作品が結構あるのでその前にも無理かも。

>現在ハリウッドで最も好きな俳優のポール・ベタニー

それまた、なかなか渋い!
オカピー
2021年07月13日 21:41
モカさん、こんにちは。

>日曜洋画劇場の淀川さん的スタンス?

淀川さんは、自分が前面に立って紹介する作品の悪口は、番組とNET(現テレビ朝日)を慮って、言えなかったのだと思います。
 本質的には結構好悪の激しい方で、ラジオや映画友の会では厳しかったですよ。邦画は黒澤明と山田洋次以外は観なかったデス。僕が参加していた頃「ツィゴイネルワイゼン」が評判で会員たちから勧められても、絶対ご覧にならなかった。

そこへ行くとみの君は実際に好きなものが多いようです。とは言え、やはり真に好きではないものに関してはコメントが短い等で、何となく解ります。日本で人気のある80年代以前のアーティストの中では、クイーンは多分そんなに興味がないと思います。
 彼が真に好きな古典的アーティストは、ビートルズ、ローリング・ストーンズ、ジェフ・ベック、ジェネシス、ピンク・フロイド辺り。ギタリストなので、ジミ・ヘンは言わずもがなでしょうが、ギターの為に一番聴くのはジェフ・ベックと言っていましたね。

>「みのさん」って書くと「みのもんた」と間違える人が

はい、私です(笑)
 と言うわけで、モカさんの表現に倣って、みの君に変えました。子供くらいの年齢なので、ちょうど良いです。
モカ
2021年07月14日 17:41
こんにちは。
>本質的には結構好悪の激しい方で
 邦画は黒澤明と山田洋次以外は観なかったデス。

 日曜洋画劇場は「褒めるところがなかったらカーテンでもいいから誉めておく」というような意味の事を言っておられましたね。良く捉えればサービス精神があったのでしょうね。


 最近みの君が出てこないので一度検索してみますね。
 最近youtubeではリクエストした訳でもないのによく出てくるので観ているのはジュニア・ウェルズとバディ・ガイです。ジュニア・ウェルズはここ40年くらいご無沙汰(長い・・笑)してましたが全盛期のライブは良いですよ。バディ・ガイは言わずと知れたジミヘンのアイドルでしたしね。
 (テープレコーダー持参でバディ・ガイのライブ会場にいる映像もありますが、影響受けまくったのがよくわかります。ものすごく嬉しそうで観ているこちらまで嬉しくなります。)

 うちはジジババも孫もyoutube 依存症です。最近の子供の将来なりたい職業はユーチューバーですって! 時代ですね・・・
 
オカピー
2021年07月14日 21:09
モカさん、こんにちは。

>「褒めるところがなかったらカーテンでもいいから誉めておく」

可笑しいですね!
実際晩年に担当させられた作品群はひどかった。何でも観る派の僕がまるで興味をそそられない作品ばかりで、カーテンすらなかったのでは(笑)

>良く捉えればサービス精神があったのでしょうね。

それは言えるかも。

>ジミヘンのアイドルでしたしね。
>(テープレコーダー持参でバディ・ガイのライブ会場にいる映像もあります

へえ。後で探してみましょう!

>最近の子供の将来なりたい職業はユーチューバーですって!

売れるのはなかなか大変です。その厳しさを教えるとともに、潜在能力を伸ばしてやるのがジジババの仕事(かな)。