映画評「ジョーンの秘密」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2018年イギリス映画 監督トレヴァー・ナン
ネタバレあり

最初に実話云々と出るので、実話ものかと思いきや、着想を得ただけのフィクションらしい。この程度のものであれば相当多くのフィクションが実話絡みになってしまう。日本だけでなく、西洋人も実話という単語に弱いのかと勘ぐりたくなりますな。

実話を基にしたジェニー・ルーニーなる女性作家の小説が原作。

2000年(これは実際と同じ)、普通の主婦と思われた80歳余りの高齢女性ジョーン・スタンリー(ジュディ・デンチ)がMI5の職員により突然逮捕される。容疑は50年以上前のソ連への原爆製造情報の漏洩である。

以降、映画は随時1938年から40年代後半までの彼女の若い時(ソフィー・クックスン)の話と彼女が尋問される現在の往来となる。

彼女は物理学を学ぶ為にケンブリッジ大へ進み、そこでロシア系美人ソニア(テレーサ・スルボーヴァ)と懇意になり、彼女を介して実はKGBメンバーであるレオ(トム・ヒューズ)や共産主義シンパの貴族青年ウィリアムと知己となる。
 大戦後期に彼女は、物理学者マックス・デイヴィス教授(スティーヴン・キャンベル・ムーア)が指導する原爆製造極秘プロジェクトに参加、何故かその秘密の内容を知ったレオなどから情報を渡すように要請されるが、断固拒否する。
 しかし、先に原爆を完成させた米国が日本に原爆を投下したことを悲しみ、抑止力に期待してソニアに接近、情報を流すのである。
 現在。この事実を知った、教授との間に生まれた弁護士の息子(ベン・マイルズ)は一度は怒るが、やがて母親を擁護する立場になる。

2000年に高齢女性がほぼ似た容疑で逮捕された以外は全くの創作らしい。

真の狙いは曖昧な感じがする。
 社会派として見れば、やはり、抑止力に関して二分される核兵器そのものの問題。ヒロインは抑止力を信じた上での行為であり、結果的にも世界平和に貢献したと思っている。この映画はその意見に全面的に同意というわけではないのだろうが、そういう意見も一聴してみようという感じである。
 政治的にはリベラルと思われている僕も、結果ではなく人間の心理のあり方において核兵器の抑止力を信ずる立場である。余りに人間不信になってもつまらない。寧ろ為政者の気を軽くする原爆の小型化を懸念する。また、何かのエラーでボタンが押されてしまうことを理由に反対するのは抑止力の問題とは全く関係ないので、議論の時に混同してはいけない。人間より自然が敵となる原発は今では反対なんだけどね。

閑話休題。
 しかし、上記は言い訳みたいなもので、本作の狙いは寧ろ初恋の人とも言って良いレオへの思いと、彼の自殺後に深い仲になる教授への思いを絡め合わせたロマンスにあるのではないかという気がする。彼女の真摯な人間性がここに現れ、最後に息子が彼女側に戻って来るのは、それ故ではないかと思う。

かくして、大衆的な人間劇として一通り楽しめるが、ソニアへの情報漏洩の部分などをもっとサスペンスフルに作ったほうが総合的に面白い作品になったはず。

ビートルズのコミカルな曲“マックスウェルズ・シルヴァー・ハンマー”での超科学(pataphysical science のテキトーな訳)専攻の女子学生ジョーンは、 医学部のマックスウェルにハンマーで殺されてしまう。関係ないけど。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント