映画評「母との約束、250通の手紙」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2017年フランス=ベルギー合作映画 監督エリック・バルビエ
ネタバレあり

文学史には詳しいと思うが、現代文学には甚だ疎く、本作の原作に当たる自伝小説「夜明けの約束」を書いたロマン・ガリも知らない。
 Wikipediaによると、僕が非常に気に入った映画「これからの人生」の原作を書いたエミール・アジャールは同一人物とのこと。ビックリした。ジーン・シーバーグの旦那さんでもあった(彼としては再婚)。彼は彼女が自殺した後1年余りして後を追うように自殺した。本人は “彼女の死が自殺の理由ではない” と言ったようだが、そう言えば【スクリーン】誌でニュースになっていたような記憶がある。

発端の舞台はポーランド。ロシア出身の母親ニーナ(シャルロット・ゲンスブール)は詐欺まがいの手法で服飾店を一時的に成功させるがやがて破産。それを機に、10歳くらいの息子ロマンを連れて、崇拝に似た気持ちを抱くフランスはニースに移住する。
 またまた詐欺まがいの手法で宿泊業に成功した彼女は、息子に作家・軍人として成功し外交官(政治家)になるよう頗る強い気持ちで説教する。
 息子はこれには些か辟易するのだが、やがてユダヤ人である為に思うように軍歴を果たせず仕舞いの後、執筆しながら自由フランス軍の兵士として活躍する。しかし、戦争が終わり帰還した時、母親が既にこの世にないことを知る。

というお話が、遠い病院へ駆けつける車の中で「夜明けの約束」の原稿を妻レスリー・ブランチ=英国の作家(キャサリン・マコーマック)が読むという、入れ子構造でもある一種の回想形式で、展開する。

事実は小説よりも奇なりを地で行く物語で、少年時代の挿話に面白いものが多いし、操縦士が目を負傷したのに無事着陸するという冒険談が大いに楽しめるが、何と言ってもヒロインの肝っ玉母さんぶりに圧倒される。こういう押しの強い人を嫌う観客も少なくないだろうが、やはり母親と子供の互いへの思いをじっくり味わうべき作品である。

母親が3年前に死んでいたのに手紙がずっと届いていたのは何故かというところが多少ミステリー的だが、あっさり明らかにされてしまうので情味の醸成が些か物足りない。こういうのはくどくてもあっさりしすぎても良からず、なかなか匙加減が難しい。とは言え、生前に250通もの手紙を書き、それを知り合いに託して死んでいった母親の行為に直接的にじーんと来る方も多いと思う。

個人的には、入隊した直後くらいであっただろうか、以前の反撥は影を潜めて母親の思いに応えようとする態度がすっかり定着したことが伺える医者への強い抗議の場面に胸を打たれる。
 これは、裏返すと、母親の思いの強さの反映にほかならない。死んだ後も息子に影響を及ぼし続ける母親の深い愛情に一言 “参りました” という気持ちになる。息子の行動から推して測れる母親の思いにぐっと来たということである。

正確に邦題を付けると、「母との約束と250通の手紙」。現状では、250通手紙を書くことが主人公の約束に関連するように読めてしまう。観てから解ることだけど。同時にこの映画は母親が主人公でもある。その理解を前提にすれば、現状の題名も悪くない。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント