映画評「ザ・ピーナッツバター・ファルコン」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2019年アメリカ映画 監督タイラー・ニルスン、マイケル・シュワルツ
ネタバレあり

最初の舞台はヴァージニア州。老人ホームに特別に収容されているダウン症の若者ザック・ゴッサーゲンが、プロレスラーになる夢を叶えようと、憧れるトーマス・ヘイデン・チャーチが開いているレスラー養成所を目指して脱走する。
 一方、青年漁師シャイアー・ラブーフが漁に関する免許を巡ってライバル関係にあるジョン・ホークスの用具に放火し、追って来るホークスらから逃走する。

この二人がラブーフのボートの中で接近遭遇することから始まるロード・ムービーである。

最初は頻りに頼って来る彼を疎ましく思った漁師もやがて親しみを覚えるようになり、川を遡って養成所に連れて行くことにする。ゴッサーゲン君を探している施設ケアマネジャーのダコタ・ジョンスンが彼らを発見するが、施設と違ってのびのびとした若者の様子に宗旨を変え、彼女もまた養成所への旅に付き合うことになる。
 ところが、ここでホークスらが現れ、ボートを燃やしてしまった為に三人は歩いて現場を目指す。何とか発見したチャーチは既に養成所を畳んでいるが、若者の自分への崇拝ぶりに臨時に教えることにする。たった一日仕込まれただけでゴッサーゲン君が近所の野外リングで試合に出て闘っている最中、ホークスが再び現れてラブーフを襲撃する。

逃げる二人に追う二組という着想が、お話としてなかなか面白く具体化されているが、作劇的にとりわけ良いのは幕切れである。
 ラブーフが担ぎ込まれた病院でのダコタの沈痛な表情、一人離れてゴッサーゲン君がロウソクを灯しているショット、そして元気な頃の凸凹コンビ、そして若者とダコタ二人がフロリダを目指すラスト・シーンと続けば、大概の方が“ラブーフは死んでしまったのか”とがっかりするが、若者が声をかけることで実は彼が後部座席に横たわっていたと理解させる。
 僕も半世紀くらい映画を観て来ているので、それ自体を予想しなくはないものの、見せ方の呼吸がなかなか良く、嬉しくなるという次第。

反面、ホークスにラブーフを二回襲わせるのは余り感心しない。ボートがなくなった後の描写が殆どないことを考えれば、一回目の襲撃を省いていきなり彼に襲い掛かるという展開にした方が観客のショックも大きくなったと思われる。

凸凹コンビの言動が面白く冒険模様を楽しく見せる一方、自立できる障碍者に対する施設の低い意識の問題も俎上に載せ、考えさせもする。背景に流れるカントリーやゴスペル(フォーク調のトラディショナルなもの)も画面によく合っていてゴキゲン。

髯づらのラブーフ君、エンディング・ロールを見るまで誰か解らなかったデス。そのラブーフ君のせいで、この映画はお蔵入りしそうになったのだとか。

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この記事へのコメント

2021年06月13日 07:17
意外によかったですよね、コレ。

<髯づらのラブーフ君、エンディング・ロールを見るまで誰か解らなかったデス。
<そのラブーフ君のせいで、この映画はお蔵入りしそうになったのだとか。

スピルバーグに説教されたとか?
やりたい放題もいい加減にしろ! という感じですよねー
オカピー
2021年06月13日 20:26
onscreenさん、こんにちは。

>意外によかったですよね、コレ。

はい。
大分前に録っておいたのですが、暫く放置新聞。
重い腰を上げてみたら正解でした。
ロード・ムービーは良い作品に当たる確率が高い気がします。