映画評「ジュディ 虹の彼方に」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2019年イギリス=フランス=アメリカ合作映画 監督ルパート・グールド
ネタバレあり

没落するスターの代りにその妻がスターになる「スタア誕生」(1954年)を高校時代に観、その解説でジュディ・ガーランドの悲劇を少しかじったことがあるので、このお話自体に吃驚ということはないものの、そのスター残酷物語ぶりにやはり胸が締め付けられる。

映画が描くのは、主に晩年の数カ月である。

1968年。子供二人と共演するどさ回りに落ちぶれた彼女(レネー・ゼルウィガー)が、本国アメリカより根強い人気のある英国に活路を見出し、為に子供を親権を争う前々夫であるシド・ラフト(ルーファス・シーウェル)に預ける形となり、このこともあって上々のスタートを切ったコンサートでのパフォーマンスが乱れて来、遂にはヤジを飛ばした観客を馬鹿にしたことから干されてしまう。
 最後の日、代役に起用されたロニー・ドネガン(ジョン・レノンやポール・マッカートニーがクォーリーメン時代にやっっていたスキッフルで非常に有名な歌手)に断って歌唱を披露、今度は喝采を以って迎えられ、彼女を象徴する「虹の彼方に」を涙ながらに歌う。

実際にはこれが最後のパフォーマンスだったわけではないようだが、YouTubeにある "Last performance" の「虹の彼方に」とダブるものがある。彼女の生涯を半端にながら知っているだけに、後半に入る頃に早くも涙腺が熱くなっていた僕はこの「虹の彼方に」に涙が止められなくなった。

フラッシュバックで紹介されるように、若い時から母親を含めた大人の映画人に好きなように支配され、デートを禁じられ好きなものを食べることが出来ず、瘦せる為にアンフェタミン(覚醒剤)を服用させられ、眠れないので今度は睡眠剤を服用する。彼女の場合は完全に自分ではなく、他人によって作られた薬物依存である。娘のライザ・ミネリが後年言うように、ジュディはハリウッドに殺されたのだと思う。

ニューシネマ以降の伝記映画の例に洩れず、時間とテーマを絞って見せる展開ぶりで、その限りにおいて公式通りという印象は否めないものの、人生は愛されてなんぼという主題が最後の二曲にうまく収斂しているのが、幾分出来すぎた見せ方と思いつつも鮮やかである、と僕は評価したい。

アカデミー主演女優賞を受賞したレネーの歌唱もなかなか良く、満足しました。

残酷物語と言えば、文字通りお国をかけて戦っていた旧ソ連や東欧諸国のオリンピック出場選手が色々大変だったことが紹介されている。ところで、東京オリンピックはどうなりましょうか。今でも日本はIOCに、日程を握っているTV局NBCと交渉してもらい10月に延ばしてほしいと思っている。ワクチン接種を考えると、三ヶ月の違いはそれまでの一年以上の差がある。

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この記事へのコメント

浅野佑都
2021年05月03日 23:40
 これは僕は、プロフェッサーとは違った意味で頬を伝うものがあったことを正直にお話しします・・。

レネー・ゼルウィガーは、「シカゴ」やアカデミー助演賞を取った「コールド・マウンテン」を観ても、演技はアベレージ以上でそこそこ歌って踊れる女優の位置づけであり、「ブリジッド・ジョーンズ」が代表作の”終わった人”という印象でした。

まさに、年齢的にもこのロンドンの時のジュディに近く、レネーとしても自身の”起死回生”を賭けるものがあったと思います。

思い起こされるのは、あのミッキー・ロークの「レスラー」であり、彼の作品も、ステロイドを打ちながら過酷なレスリングの試合に立つ老プロレスラーに、ミッキー自身のスクリーン・カムバックを重ね合わせていて、この映画のレネー・ゼルウィガーを彷彿とさせるものでした・・。

言ってみれば、映画そのものよりも、その背景に琴線を震わすものがあり、合わせ技といえましょう・・。


もちろん、見事オスカーを受賞のレネーは、その歌声に「シカゴ」のころと比べ物にならない進歩が見受けられますし、ジュディのちょっとした仕草も細かく再現していると思います。
具体的には、「虹の彼方に」の出だしの、♪Somewhereの部分、オーバーヴォイスにならずに感情込めて歌い上げるの結構難しいと思います。この曲は音と音がはなれているのが特徴ですが、私事ですがこの曲でカラオケで99点出したことが(笑)
もっとも、カラオケの採点は100点が必ずしも一番上手いわけではなく、音程の確かさやビブラートのかけ方、ロングトーンの的確さ、さらにはマイクの近づけ方で決まるので・・。歌は心でありましょう!

>ライザ・ミネリが後年言うように、ジュディはハリウッドに殺された

確かに、そういう部分は無きにしもですが、プロフェッサーが指摘した主題である「人生は愛されてなんぼ」の視点でいえば、紛う方なく彼女は幸せでしたね・・。

幼いころの過酷な体験は、イエスがそうだったように、神からのギフトを受け取った者の試練でもある・・。
映画製作後、80年経ってもなお、多くの人がその歌声に魅了され、今もこのプロェッサーのレビューに僕も万感の思いでコメントしている・。それがなによりの証でしょう・・。

覚せい剤も当時は合法的で、日本でも戦前は薬局で簡単に手に入りましたし、中曽根康弘なんかも試験勉強の際に覚醒剤使用して見事に(笑)合格しています。

ビートルズの全盛期は、麻薬と縁が切れませんでしたし、ポールは日本に大麻を持ち込んで逮捕されている(おそらく今でも軽くやっているでしょう笑)
健康被害等、体への影響は個人差があり、日本人でもピエール瀧など、何十年と麻薬を服用していても一般人よりも元気で仕事をしている。
僕は、麻薬に関して、コカインやLSDなど中毒性の強いものはともかく、大麻は(当局への報告など)条件付きで合法化するのがベストだと思いますね・・。
緊急宣言でもなんでも一律で禁止は、日本人の悪い癖でしょうね。

>東京オリンピックはどうなりましょう

ここにきて、モデルナ製ワクチンもやっと認可されましたね。まあ、同じ製造過程を辿った非生ワクチンですし、大差ないでしょうが・・。
日本のマスコミや医療関係者の煽りは無視して、英国型ウィルスにも十分対応できると思いますね。本家のイギリスなんかもワクチンで劇的に患者数が減って、さっさと規制解除に向かっていますし。

そもそも、コロナよりも、37万床も空きがありながら、何もせずに重症患者のベッド数が足りないとほざく病院側と厚労省の体たらくが問題でしょう。去年の2月の時点で、この事態は予想できたはずですから・。
知人の掛かりつけの内科医とよく言うのですが、末端の医療従事者も含め、欧州に比較して日本人はコロナを怖れ過ぎています。

プロフェッサーが言われるように、NBCと米国スポーツ界は、10月開催の大英断を下すべきです、本当は!
7月開催だと、(14日間の待機期間免除のため)選手の毎日のウィルス検査がネックになります。
ただでさえ、ドーピング検査等あって煩わしいのに、選手がそこまでしてやりたいと思いますかね(笑)
10月開催ならば、ある程度、海外からの観客も受け入れられるし、57年前の東京五輪も10月でしたね!

オカピー
2021年05月04日 20:22
浅野佑都さん、こんにちは。

>レネー・ゼルウィガー

僕はコンスタントに出演作を観ていたので、ミッキー・ロークのような印象は余り持っていず、その辺が鑑賞にも表れたのでしょうね。
 確かに、彼女の最盛期はブリジット・ジョーンズ」から「シカゴ」「コールド・マウンテン」を経て「ブリジット・ジョーンズ」第2作くらい(2001~2004年)と短いですが、その後の「ミス・ポター」は良かった。しかし、話題作こそ少なくなったと言え、コンスタントに出演作ので、僕には余り人気零落した感じには見えなかったわけです。
 しかし、言われてみると、そういう感じではあるかもしれない。

>年齢的にもこのロンドンの時のジュディに近く

当時の写真を観ますとまだ40代だったのにえらい老けようですね。薬の影響とは言え、恐ろしい。

>見事オスカーを受賞のレネーは、その歌声に「シカゴ」のころと比べ物にならない進歩が見受けられます

そうですね。
僕は「シカゴ」でのヘタウマの魅力も捨てがたいと評しましたが、仮にレコードを買って聴くなら断然こちらですね。

>カラオケの採点は100点が必ずしも一番上手いわけではなく

コンピューターはスキルで評価するしかないわけで、実際に上手く聞けるかと言うと、必ずしもそうではない。
 モカさんに紹介されたKaren Daltonの声が途切れるような歌い方では、カラオケではどうなるのでしょう?

>人生は愛されてなんぼ」の視点でいえば、紛う方なく彼女は幸せでしたね・・。

観客に愛されなければ救われない人生というしかない状態でした。映画は、浅野さんの仰るように、観客に真に愛された数少ないスターという扱いでしたね。

>ビートルズの全盛期は、麻薬と縁が切れませんでしたし

ジャズ、ロック、ラップ・・・西洋では、時代が変わっても良い音楽を生み出すのは麻薬とさえ言われていますね。

>(当局への報告など)条件付きで合法化するのがベストだと思いますね

そうですね。
それと麻薬依存は、犯罪ではなく病気と位置付けるのも、実は麻薬依存者を減らす近道と思いますが。

>病院側と厚労省の体たらくが問題でしょう。

昨年以来延々とコロナばかりやっている「朝まで生テレビ」でもそうした意見が基調となっていますね。ワクチン承認でも厚労省の悪い癖が出たと思います。慎重を期したいのは解りますがね(実は既得権益も絡んでいるらしい)。無駄に三ヶ月を費やしてしまった。

>10月開催ならば、ある程度、海外からの観客も受け入れられるし、

アメリカは七月に日常に戻ると宣言されましたね。欧州もその後を追うでしょう。七月では、日本は順調に行っても高齢者が終わるところくらい。