映画評「ブリット=マリーの幸せなひとりだち」

☆☆★(5点/10点満点中)
2019年スウェーデン映画 監督ツヴァ・ノボトニー
ネタバレあり

50年くらい前に「サッカー小僧」という割合気に入ったスウェーデン映画があった。そんなことを思い起こさせるスウェーデン映画である。

以前から疑っていた、40年連れ添った夫ケント(ペーター・ハーバー)の浮気が発覚したのを契機に63歳の専業主婦ブリット=マリー(ペルニラ・アウグスト)は家を出、田舎町のユース・センターを管理する仕事に就くが、その付帯条件としてカップを目指す児童サッカーの監督をする羽目になる。自分のことに振り向くことのなかった夫がサッカー・ファンなので、何とかなると思ったらしいのだが、大いに甘かったことにすぐに気づかされる。
 ベテラン警官のスヴェン(アンデシュ・モッスリング)が彼女に気があるようで、何かと口実を設けて近づいてくる。同時に夫も反省のそぶりをみせて町にやって来る。
 彼女が見よう見まねでやっているうちに子供たちは多少の充実感を覚えるも、コーチにライセンスのないチームは出場できないというカップの決まりに触れてがっかり。が、観客も予想できるように、彼女の間借りしている家の持主が今は弱視となった元女子サッカー選手だった為に(彼女をアシスタント・コーチにして)出場を果たし、大敗もチーム史上初めて得点を取る。
 かくして自信を得た彼女は、夫が迎えに来た後、半世紀前の夢であったパリ行きを実現する。彼女がその後何を選ぶかは定かではない。

というお話で、邦題が示す通り、一人の熟年女性が初めて一人で人生を歩み出すところまでを描く作品である。まあ家を出た時点で小さな自立をしたことにはなろうが、彼女自身が認めるように、子供たちを含め実は周囲の人のことを考えて行動していたに過ぎない。
 彼女が夢を追わず、規則正しさを尊んできたのは、少女時代に姉を亡くした後両親の関心を引くのが目的で、いつの間にかそれが彼女の生きる上でのスタンスになっていたわけである。それを破る要素となったのが、夫の不倫発覚であり、サッカーである。彼女がより先に進む契機となったのもサッカーである。

とは言え、この映画の主題が彼女の独り立ちである以上、サッカーは、子供時代のこと(特に姉の死)や警官との恋愛同様、彼女の人生に影響を与える一要素に過ぎない。だから、一部で指摘される、彼女の人生に直接関係のない、前任者“おやじ”(元女子サッカー選手の父親)などの説明は(現状通り)一切必要なく、逆に彼女の子供時代のことや恋愛感情を省くことはできない。

スウェーデン映画らしく劇的な要素が全然ないのが自然で好もしいが、しかし、お話としてはさほど面白いとは言えない。ライセンス云々の流れも見え見えである。サッカーと人生を結び付ける台詞や、最後にヒロインのプロフィールの向こうに何気なくエッフェル塔を見せる辺りは上手い。

ヒロインはマリー・ブリットと間違えて言われる。その昔マイ=ブリット・ニルソン(ニルション?)というスウェーデンの女優がいたように、ブリットが先に来るのは珍しいのだろう。

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