映画評「レディ・マエストロ」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2018年オランダ=ベルギー合作映画 監督マリア・ペーテルス
ネタバレあり

今でも女性の指揮者は少ないが、90年程前に指揮者として確立した地位を得た最初の女性となったアントニア・ブリコの成功までの格闘を描いた伝記映画である。

オランダ系移民のウィリーことウィルヘルミナ(クリスタン・デ・ブラーン)は物凄い音楽への情熱を持ち、ピアニストになる為にナイト・クラブでの演奏で小遣い稼ぎをするが、母は音楽に理解がなくて彼女の愛する古ピアノを燃料にしてしまう。
 怒った彼女は家を飛び出、クラブで働くきっかけを作ってくれた演奏家ロビン(スコット・ターナー・スコフィールド)の家に泊めてもらうと、彼の援助もあって、女性に偏見を持つピアニスト兼指揮者ゴールドスミス(シェイマス・F・サージェント)すら認めさせて音楽学校に入学するが、セクハラ・パワハラを事件化されたことを逆恨みされて彼から退学を余儀なくされる。
 両親が養父母であったことを知った彼女はオランダへ行くが、実母は若くして死亡したことを知る。米国の恋人フランク(ベンジャミン・ウェインライト)の懇願を無視してベルリンの指揮課へ入学した彼女は、アメリカ嫌いの名指揮者カール・ムックの援助で見事な成績で卒業しただけでなく、やがて世間の冷たい目を乗り越えて披露した指揮が好評を持って迎えられる。
 しかし、アメリカに戻ると欧州での成功は軽視され、ゴールドスミスなどの嫌がらせで苦労することになる。

というお話で、日本では現在でも女性への偏見が根強く、今年前半最大の笑いもとい話題をばらまいた森元首相(森元・首相ではなく、森・元首相ですな)の女性差別発言を聞くとまだまだなあという印象を受ける。本作に出て来るゴールドスミスも元首相に似て“女性はいつも遅れる”と言っております。
 男性だけではなく、保守的(映画に出て来るのは大概上流階級)な女性も女性の社会進出を妨害するわけで、本作のフランクの母親も新聞社に圧力をかけたりする。といった具合に、進歩的・・・というより当たり前の権利を行使しようとして行動する女性が、権利行使を邪魔する保守層や差別主義者との戦いを見せるのが主眼となっていて、プロパガンダ的に過ぎる印象がないでもないが、恐らく半ばフィクションとしてフランクとの恋模様を描く事でその印象をかなり柔らかくできたと思われる。

結果的に二人の仲は破局に終わるのだが、それでもその絡みで見せる幕切れが実に巧いのだ。彼女が女性だけの交響楽団をお披露目する幕切れにフランクが駈けつけるのは定石にすぎないものの、彼が彼女と知り合うきっかけのなった劇場で彼女がやった指揮者の前に座るという行為を繰り返すのが実に洒落ている。この扱いが大いに気に入ったので、★一つ分余分に進呈する次第。

映画が最後に出すコメントは、差別と関係があるかどうか定かではない。絶対数が少ないので比較しようがない。その絶対数が少ないのは社会的差別が原因であったことは確かでありましょう。

人が“いつも””皆”と言う時、勿論蓋然性が高いだけと承知して使っているのだ。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント