映画評「ピクニック」(1955年)

☆☆☆☆★(9点/10点満点中)
1955年アメリカ映画 監督ジョシュア・ローガン
ネタバレあり

1950年代~60年代に映画界に人気のあった劇作家ウィリアム・インジの戯曲を手堅いジョシュア・ローガン監督が映画化。40年前に早稲田松竹で観て堪能した作品であります。

穀倉地帯カンサス州のある町に、逞しい青年ハル(ウィリアム・ホールデン)がホーボーよろしく貨物車から降り、大学時代の親友アラン(クリフ・ロバートスン)を頼りに一歩を歩み出す。彼の父親が穀物倉庫の経営者なのである。その前に無一物の彼はたまたま目に入った老婦人に声をかけ、力仕事の代りに朝食を食べさせてもらう。
 これを契機に、行かず後家の女教師ローズマリー(ロザリンド・ラッセル)に間借りさせている主婦(ベティ・フィールド)とその二人の娘マッジ(キム・ノヴァク)とミリー(スーザン・ストラスバーグ)と知り合う。マッジは男好きのする美女で、母親は金持ちアランと結婚させる腹積もり。妹ミリーは不細工と自覚している為に勉学に精を出している。
 折しも町は年に一度の労働祭に盛り上がる日を迎え、ハルは女王に選ばれたマッジと踊るうちに互いを強く意識し、それに嫉妬したアランがあらぬ言いがかりをつけて警察を呼ぶ。警察を何とかまいたハルは翌朝マッジに声をかけて再び貨物列車に飛び乗る。妹に勇気づけられたマッジは彼を追うようにバスに乗る。

通常の恋愛劇と違って、主役たる二人に絡んでくる周囲の人物の性格や心理の描写が非常に緻密。中でも次女ミリーと行かず後家の女教師の点出が秀逸で、スーザン・ストラスバーグとロザリンド・ラッセルがこの二人を演じて出色。
 二人の若い恋人たちをめぐって、いつの間にか酒を飲んだ未成年ミリーが泣き出し、ぐでんぐでんになるほど飲んだ女教師がハルに絡む。ミリーはハルにおいて恐らく初めて異性への恋心を抱いたのであろうし、女教師はオールドミスの荒廃した気持ちをぶつけたということであろう。
 しかし、これが一つの事件となって次の結果をもたらす。即ち、オールドミスは時にバカにしていた中年独身男アーサー・オコンネルと強引に結婚してしまうし、ミリーは姉を送り出す気持ちになる。勉強一筋のような(と言いつつ煙草をこっそり吸ったり日本の優等生とはちと違う)少女ミリーの恋心の胚胎があって初めて幕切れのマッジの追いかけも感動的になったと思う。

視覚的なハイライトは、祭におけるピクニックの夜の場面で、映画館の大きな画面で観た時ハルとマッジが名曲「ムーングロウ」Moonglow に乗って踊るシーンに陶酔させられたのを思い出す(プライムビデオを見る画面ではそこまで夢中になりにくい)。その前にデビュー前にビートルズがカバーしていた「エイント・シー・スイート」Ain't She Sweetもかかって楽しい。

丁度一日の出来事で、欧米人が大好きな「真夏の夜の夢」のヴァリエーションと言えるだろう。

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この記事へのコメント

2021年04月09日 19:16
わたしも9点くらい、あげると思います。
なんといっても思いだす、覚えているのは、ムーングロウのメロディで、もう、泣きそうなほどムードがありますね。
こういう名シーンがひとつでもある映画は、忘れ得るものではなく、名作となっていくのだと思います。

マリリンの「バス停留所」との関係も濃いので、私はなおのこと好きです。
スーザン・ストラスバーグは、マリリンとの日々を本に書いていますし、いろいろと好きにならざるを得ない要素が多いのでした。
オカピー
2021年04月09日 22:09
ボーさん、こんにちは。

>ムーングロウのメロディで、もう、泣きそうなほどムードがありますね。

ボーさんも似たようなことを考えていらっしゃるようですが、この場面は、非ミュージカル映画の史上最高のダンス・シーンですね。素晴らしすぎます。

>マリリンの「バス停留所」との関係も濃いので、私はなおのこと好きです。

「バス停留所」はマリリン主演映画で恐らく一番好きな作品で、ジョシュア・ローガン監督作品としては本作に次ぐといった感じです。