映画評「夜歩く男」

☆☆☆(6点/10点満点中)
1948年アメリカ映画 監督アルフレッド・L・ワーカー
ネタバレあり

戦前終戦後の映画を少なからず見ているが、アルフレッド・L・ワーカーという監督は初めてかもしれない。
 本作は第2次大戦後にアメリカで流行ったセミ・ドキュメンタリー(ジュールス・ダッシン「裸の町」等)に分類される作品。つまり、原題He Walks by Nightも邦題も似ているディクスン・カーのミステリー「夜歩く」 It Walks by Night とは何の関係もない。

夜歩く男リチャード・ベースハートが見咎めた警官を撃つ。
 盗難課の警部ロイ・ロバーツと警部補スコット・ブラディらは、ホイット・ビッセルの経営する企業に盗難品をレンタルさせていた男に興味を持ち、ビッセルに連絡させて夜中に会社に寄こし、そこで逮捕しようという計画を立てるが、事前に察知していた男を銃撃戦の末に取り逃がす。その男がベースハートである。
 その後男は恐らく警察を混乱させるのを目的に強盗犯に変身し、次々と盗難を起こす。警部は当時始まったばかりらしいモンタージュ写真を使って、夜歩く男と強盗犯が同一犯であることを突き止め、また、警察の行動に詳しいことから探るうちに以前警察で通信係として働いていたことも掴む。郵便記録から現住所を掴み、やがて夜襲の末に彼を地下道へ追い込む。

というお話で、今では当たり前になったモンタージュ写真が当時は画期的で、観客に面白がられたらしい。ミステリーとしては倒叙ものである。
 捜査ものとしては、盗難品を貸し付けた男(即ち刑事殺し)と強盗犯は殺人課と盗難課とで別々に捜査すれば済むことなので、モンタージュ写真をビッセルに確認させる必要はない(その場面は無駄気味)。同一犯であれば、確かに時間の節約にはなるが、盗難課に殺人犯を追わせる結果が少し違和感を残す。

映画サイトで読んだ ”犯人の動機に迫らないのがスマート” という意見は知的で極めて妥当。例えば、写真を見て写された人間に思いを馳せるか、写真そのものの芸術的価値を見るかによって、その人の知性や環境が測られる(ブルデュー「ディスタンクシオン」より)。純粋に警察の捜査を描く映画で犯人の動機を求めるのは間違いである。犯人の性格や動機が描かれるのが常に良い映画と思い込んでいる人がいるが、逆。犯人のそういう面を描くのは別のジャンルなのだ。

夜景が多い映画である。ロケを生かしたハイキーのモノクロ画面が美しく、とりわけ地下道の場面がシャープ(撮影監督は後に「巴里のアメリカ人」(1952年)でカラーでも巧さを発揮したジョン・アルトン)。この映画の最大の見どころと言うべし。

」(1954年)や「白鯨」(1956年)でのストレートな青年役で印象深いベースハートの恐らくは最初の主演作で、そのイメージを裏切るちょっと不気味な犯罪者に扮して好演。

WOWOWのアカデミー賞特集が些か寂しい。新しい作品を強調するようではダメだ。NHKは名作が多いが、それ故に新たに保存すべきものが極めて少ない。古い映画はプライムビデオに出て来る無償枠で凌ぐことが多くなっている。

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