映画評「スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼」

☆☆(4点/10点満点中)
2020年日本映画 監督・中田秀夫
ネタバレあり

シリーズ第2弾で、原作の志駕晃のミステリーも第2弾らしい。映画版が当たる(ヒットする)と原作と離れて第2弾が作られることも多いが、これはそうではないらしい。

山林で女性の白骨死体が発見される。警察は前回の事件で逮捕され現在収監中の連続殺人犯・浦野(成田凌)の犯行を疑うが、本人は彼が唯一会いたがっているサイバー犯罪対策課の加賀谷刑事(千葉雄大)に対して否定する。加賀谷にもたらした新情報により警察はさらに男性死体も発見する。
 浦野によれば、犯人は彼と交流のあったMなる人物である。折しも仮装通貨が盗み出される事件が起きるが、JK16なるハンドルネームのホワイトハッカーにより使用できなくなる。この事件の犯人が正にMで、怒った彼はJK16を殺す。
 かくしてM逮捕に躍起になる警察は前作で紹介された通り闇サイトに通じている浦野に頼ることになり、Mらしき人物にスマホを乗っ取られた加賀谷の恋人・美乃里(白石麻衣)を囮にMをおびき出すことにする。しかし、加賀谷が心配した通り、彼女はMの雇った男に誘拐される。スマホの情報により誘拐実行犯に追いついた加賀谷が男と争っているところへMとして捜査線上に上がった人物(井浦新)が現れる。
 さあどうなるかと思っていると、何とこの人物は誘拐犯を撃つのである。何故か? 彼もまたサイバー犯罪を取り締まる刑事だったのである。

細かい背景はミステリーとしての面白さを損なうので実際に見てもらうしかないが、相当卑怯な作り方ではある。
 この刑事に関して多々疑問がある中で一番は、美乃里を警護していた刑事を襲撃することである。この時点でこの刑事は既に彼女が彼が調べていたサイバー犯罪に関係ないという事実を知っていたはずなので、同じ組織の人間の邪魔をする必要はなく、却って別の男に拉致される結果をもたらすだけ。何とも妙ちきりんで、卑怯なミスリードである。

いずれにしても、彼がMでない以上、Mは別にいることになる。この騒動の前に浦野が細工を弄して留置場を脱走している。恐らく彼がMであろうという推理も実は見当違い。Mが誰かということもここでは述べられない。

先日の韓国映画「暗数殺人」(2019年)に似た設定で始まり、やがて警察と犯罪者の協力を描いて定評ある「羊たちの沈黙」(1991年)状態に発展していくのは悪くないアイデアとしても、銀髪長髪の浦野の識別ができない刑事はドジすぎる。いかに警官の制服を着ているとは言え、あれだけ目立つ銀髪長髪の警官はいないであろうから、雁首を並べている警官がそれを不審に思わないのは変であるし、加賀谷が警官の顔を一々確認するのも阿呆と言うしかない。制帽からのぞく銀髪で解るのである。
 それとは別に、前作からこのシリーズの刑事たちは観客にサスペンスを感じさせるかのように間が抜けた行動ばかりするのだが、浦野に呆気なくしてやられ殺されてしまう賭博刑事も全く情ない。

総合的な作劇として、ロマンス色が強いなど色々と欲をかいて作品の性格がはっきりしないのは大問題であるが、そのロマンスにしても、美乃里が護衛の刑事の車に乗る前に自ら加賀谷にキスをしないのは気が利かない。脚本家が幕切れに彼らのキスを取っておいたのは理解できるが、ここのキスはドラマツルギー上最後のそれとは違う意味を持つのであって、そこで入れて何の支障もなかったのだ。

今年100作余り観た中で、IMDbでの投票結果がワースト3に入る。日本人としては寂しいが、むべなるかな。

近年の日本サスペンス映画、相当デフレです。

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