映画評「権力に告ぐ」

☆☆★(5点/10点満点中)
2018年韓国映画 監督チョン・ジヨン
ネタバレあり

現在も裁判中という、外資による韓国大手銀行安価売却事件に絡む政治サスペンス。昨日の「暗数殺人」がまともだったので期待したが、こちらは韓国映画の悪いところが出て、平均的大衆映画に留まる。

映画は、投資会社への売却が沙汰される大手銀行の女性職員と金融監督院の役人が不審死を遂げるところから始まる。役人の交通事故に見せかけた他殺の後、女性職員が検事チョ・ジヌンにセクハラを受けたとして自殺したのである。
 検事は自身の無実を証明する為に調査を開始、職員の自殺がどうも偽装らしいと知っただけでなく、やがて投資会社をバックアップしている法律事務所の敏腕女性弁護士イ・ハニと呉越同舟的に交流を続けるうちに、彼女の父親の知人でもある元首相を筆頭とする政済界の大物が絡んでいると認識する。
 盗聴までやって掴んだ証拠で大物たちを逮捕できるところに至って検事部長が検事総長の地位と引き換えに追及を取りやめ、金融委員として懲罰的売却に導くと期待させたイ・ハニも自分の将来の為に裏切ってしまう。
 それでも、同僚の封鎖をかいくぐり、銀行の組合が騒ぐ中でチョ検事は証拠があると声を上げるのである。

で、現在まで裁判が継続中で、逮捕者は未だに出ていないとのこと。現時点で解決に至っていない巨悪事件を取り上げた勇気ある社会派作品と言えるが、どこの国でも多かれ少なかれそういう面があるとは言え、本作に限らず韓国映画が描き出す法曹界の連中の汚れぶりが凄まじい。
 その中で主人公の正義感が際立つ作り方が際立つ作り方が為されており、一旦社会正義のほうに傾くかと思われた女性弁護士が自分の未来を選ぶ場面とのコントラストがこの主題展開において効いている。

しかし、前半における主人公のコミカルな扱いが感心できない。セクハラの汚名を着せられた主人公の切実さが伝わりにくい。この映画の場合は、前半と後半のトーンが一貫しないという映画芸術としての洗練度の問題以上に、その場その場の切実さをうまく感じさせられないという弱点として覿面(てきめん)に現れてしまっている。
 一生懸命作ろうとしているのが解るだけに、実に勿体ない。韓国大衆の嗜好に合わせて折角の素材をふいにした典型と思う。

日本にも裁判中の冤罪事件を扱った「松川事件」(1961年)などの映画がある。裁判官の扱いなど、現在の韓国映画の検事に対する批判的スタンスに近い。昔は日本映画も骨があった。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント