映画評「ハウスメイド」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2010年韓国映画 監督イム・サンス
ネタバレあり

先日観た韓国の古典スリラー「下女」の50年後のリメイク。
 オリジナルはモノクロ時代の欧米スリラーに匹敵する純度の高い秀作だが、本作は階級対立がテーマとして明確に打ち出されている。その点でオリジナルより「パラサイト 半地下の家族」に近い。

下層階級のチョン・ドヨンが、若い大富豪イ・ジョンジェの住み込み家政婦に雇われる。先輩家政婦のミタならぬユン・ヨジョンが指導に当たる形で、双子を妊娠している高慢な若奥様ソウには好かれないが、6歳くらいの娘アン・ソヒョンには気に入られる。
 若い家政婦の素足に欲動を抑えられなくなった主人は彼女と肉体関係に及び、彼女は妊娠する。ベテラン家政婦はうっかり屋の本人が気づく前に察知、大奥様パク・チヨンに告げる。恐らく娘以上に性悪な大奥様はわざと脚立にぶつかり、掃除をしていた若い家政婦を落下させる。それでも母体に影響ない為一家は大金との引き換えに家を出てもらい堕胎し、不問に付させようとする。
 結局家に居座る彼女に薬を飲ませ、意識を失っているうちに無理矢理に堕胎する。さすがにのんびりしている家政婦もこれには憎悪を募らせ、一家の見ている前で想像を絶する行為に出る。

オリジナルは実質的に劇中劇である為、凄味のあるヒロインの扱いも最終的に印象としてボケてしまったが、本作は額面通りの壮絶さとして脳裡に焼き付けられる。50年の時代の差が出た結果と思う。

翻って、ヒロインはオリジナルのずるさのある妙齢女性と違って相対的にやや鈍いお人よしと描かれ、上流階級の人々の悪どさが強調される形。オリジナルには出て来ない大奥様が最重要人物として加わるのはそれを強調する狙いである。そもそもオリジナルの一家は新築の家のローンを払うのに汲々としている中流階級に過ぎなかったわけで、ここにオリジナルとは違う階級対立の構図が成立する。

前半はエロ度が必要以上に高くて、上品な (笑) 僕には些か気に入らないが、その代わり、ある時期以降の韓国映画にほぼ必ず出て来るシリアス映画前半におけるギャグや過剰なお笑いを一切排除しているのが好もしい。

スリラーのサブジャンルとして“召使もの”というのがあると思う。通常召使側が怖がらせるが、本作の扱いは逆。そこが珍しい。

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この記事へのコメント

vivajiji
2021年03月03日 18:17
「召使」ものは、けっこうありますよね。
ジョセフ・ロージー「召使」、
ルイス・ブニュエル「小間使いの日記」とか、
「小間使い〜」のリメイク「あるメイドの
密かな欲望」(プライムにあり)は近頃のもの。
秀作「ドレッサー」もこの類に入りそう。^^
本作ラスト、愚鈍なヒロインの唐突この上ない
あのぶら下がり発火の画がしばらく目に
焼きついて仕方なかったです。

オカピー
2021年03月03日 21:34
vivajijiさん、こんにちは。

>ジョセフ・ロージー「召使」、
>ルイス・ブニュエル「小間使いの日記」

これは両方とも再鑑賞したいデス。どちらもブルーレイでもDVDでも出ているということは、半世紀以上前の作品につき大した放送権料も払わずに放映できるはず。NHKもWOWOWも近年は本当に情けない。

>リメイク「あるメイドの密かな欲望」

調べたら、監督が僕が余り信用していないブノワ・ジャコー。観るべきか観ざるべきか、それが問題じゃ、ですな(笑)。

>あのぶら下がり発火の画がしばらく目に焼きついて仕方なかったです。

夢落ち形式にしなかっただけに、壮絶さがずっと残りますね。オリジナルはその点が弱い。全体の映画の質では勝りますが。