映画評「犯罪河岸」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1947年フランス映画 監督アンリ=ジョルジュ・クルーゾー
ネタバレあり

1980年代に観たことがあり、我がライブラリーにビデオもあるが、画質が上であろうプライムビデオで観る。アンリ=ジョルジュ・クルーゾーの日本における出世作である。

第二次大戦直後のパリ。ピアニストのベルナール・ブリエは、ボードヴィルの歌手をする妻シュジー・ドレールの余りの人気に焼きもちを焼く。ある時妻の親友である女流写真家シモーヌ・ルナンのところで撮影をしていたシュジーが、映画会社も持っている奇形の老富豪シャルル・デュランに気に入られ、色々とちょっかいを出される。本人は出世の為と割り切っているが、夫の焼きもちは益々熱くなる。
 かくして彼が富豪のいるカフェの個室まで乗り込み、ボーイがそれを目撃する。大事な伏線その一である
 シュジーは富豪の宴会に出かける。面白くないブリエ氏は、自宅にメモに老人の住所を発見すると、拳銃を忍ばせて邸へ向かう。ところが、老人は既に殺されてい、慌てて家を離れるが、車を何者かに盗まれる。これが伏線その二
 シュジーは親友シモーヌに “瓶で殴り倒して慌てて出て来た” と告白すると、シモーヌは夫へは内緒にするよう言うと、証拠となる彼女のマフラーを取り戻しに忍び込み、指紋等を消して戻って来る。
 ここで地道な刑事ルイ・ジューヴェが登場、丹念に証言や証拠を集め出す。刑事の執拗な追及にブリエは老人宅に言ったことを告白、留置場に送られる。それを聞いたシュジーも遂に犯行を自白する。
 しかし、刑事はこれを事件の解決とは考えない。

という倒叙ミステリー型の刑事もの。厳密には犯人の犯行が描かれず、真犯人も不明なので倒叙ミステリーではないが、本格ミステリーでもない。

ジューヴェの刑事は、後年のジャン・ギャバン主演によるメグレ警部もの(「殺人鬼に罠をかけろ」「サン・フィアクル殺人事件」)同様、サスペンスに依拠しない地道な探索型だから、必然的に刑事に魅力がないと持たない内容である。
 ジューヴェ刑事も軍人時代にアフリカにいた時に設けた混血の息子を大事にする人情家だが、真に追及しようとした時の迫力は打って変る。ギャバンのメグレも良いが、この辺りのジューヴェの変幻自在な演技が圧倒的だ。

真犯人の扱いが唐突・・・という意見を読んだが、伏線その二があるので唐突ではない。少なくともドラマツルギー上は全うすぎるくらい全うである。伏線その一は後段でブリエ氏が犯人として疑われる最大の理由となるということ。

息子を何の縁もない子供という、上とは別の或る人の解釈も違うと思う。アフリカでの話が出て来るので彼の実子と僕は理解する。

今の若い人がどう思うか知らないが、地味ながら実にスピーディーな見せ方をし(地味なお話は鑑賞者に速く見えないように感じられる)、かつ、がっちり作っている。速く見えるだけで全く速くない昨今の映画とは段違いだ。
 ただし、こういうドラマ型刑事映画は彼らには面白く見えないであろう。

初めてこの映画を知った少年時代には“はんざいかがん”と読んだ。しかし、内容を考えると“はんざいかし”と呼んだ方が正解みたい。“かし”と読む場合の ”河岸” には、(飲み食いする、あるいは遊ぶ)場所の意味がある。

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この記事へのコメント

2021年03月26日 21:43
そういえば、この映画の記事書いたなと調べたら、13年前ですよ!
クルーゾーって好きです。まさに、狂うぞお!みたいな映画が多く。いや、来るぞー! でしょうか。お笑いのほうのクルーゾー警部を思い出すといけません。
彼のまだ見ていない作品も、どうにか見てみたいですね。
オカピー
2021年03月27日 21:41
ボーさん、こんにちは。

>来るぞー

その昔、市川崑の映画が当たらない時、クルーゾー(来るぞー)ではなく、崑(来ん)だけにね、と言われたという話がありますね^^