映画評「ドミノ 復讐の咆哮」

☆☆(4点/10点満点中)
2019年デンマーク=フランス=ベルギー=イタリア=オランダ=イギリス=アメリカ合作映画 監督ブライアン・デ・パルマ
ネタバレあり

WOWOWのパンフレットを眺めるうちブライアン・デ・パルマの名前が目の片隅に入ったので、観ないわけには行かなくなった。彼の名前がなかったら観ることはなかったであろうスリラー映画である。

コペンハーゲンの町を警邏中の刑事ペア、ニコライ・コスター=ワルドウとソーレン・マリンが家庭内暴力との通報を受けて、該当するビルに駆け付ける。そこで靴に大量の血をつけた北アフリカ出身らしい男エリック・アブアニーを発見、確保するが、コスター=ワルドウが拳銃を忘れて来た為に結果的にマリンが首を切られて(最終的に死ぬ)、男にも逃げられる。
 拳銃不携帯と同僚置き去りのカドでコスター=ワルドウは事件捜査から外されるが、同僚の女刑事カリフ・ファン・アウテンと共に逃げた犯人の行方を探る。ISIS幹部に父親を殺された犯人はCIAに拉致され、家族の身柄と引き換えに、幹部確保の為に働かされることになる。
 アブアニーがスペインのアルメリアに行くことを掴んだ二人の刑事は同地へ急行、その足跡を追跡するうちに、ISISが大規模テロを敢行する予定の闘牛場に辿り着く。

ISISの勢力縮小に伴って最近欧州における大きなテロはないとは言え、依然欧州人にとっては他人事(ひとごと)ではないイスラム原理主義者によるテロを素材にしている。

近年の欧州映画では珍しい素材とは言えないものの、内容より部分的にデ・パルマらしいカメラワークがあるのが取柄だろうか。
 その一は、序盤の「めまい」を意識したようなビルの高所を使ったサスペンス場面。しかし、ヒッチコッキアンとしてのデ・パルマが堪能できるかと言えばそんなことはないレベル。
 その二は、終盤の闘牛場で二人の刑事、一人は液体爆弾を携行する実行犯に、一人はそれを闘技場の屋上から指揮する幹部に夫々接近していく様子を捉えたカットバック。こちらも取り立てて素晴らしくはなく、凡監であればもっと散漫になったにちがいないという相対的な評価が辛うじて出来る程度でござる。

作劇に大きな問題がある。アブアニーの復讐と二人の刑事の復讐が二重奏を成すように進むのは悪くないアイデアとしても、実はマリン刑事と不倫の関係にあった女刑事が復讐の思いに駆られてアブアニーを殺すのは、アブアニーの描写を多めにした作り方、中盤のドラマ寄りの進め方、イスラム・テロへの言及という三点を併せて考えた時に、かなり齟齬感を覚える。
 つまり、無数の映画を観、少なからず小説を読んできた経験から言うと、彼女がアブアニーを結果的に刑事殺しに追い込んだISISの幹部を殺すのがドラマツルギー上は正しいのである。

欧州人と言えば、40年前にCMに使われたウルトラヴォックスの曲「ニュー・ヨーロピアンズ」が好きだった。

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この記事へのコメント

浅野佑都
2021年03月16日 03:45
>「ニュー・ヨーロピアンズ」

https://www.youtube.com/watch?v=3li5I_zlLW8

ハイ、覚えてます、これですよね!カッティング・ギターが新鮮な感覚で。でも、本来の彼らはシンセサイザーを前面に出すグループでした・・。
CMはデザイナーの三宅一生がヘリコプターに乗って下りてくる・・妖艶美女は、イッセイ・ミヤケコレクションでお馴染みの山口小夜子。
すみません、映画より一行コメントに反応する浅野でした(笑)


ルパン三世firstシーズンや「カリオストロの城」の、誘拐されたクラリスを追って山道で展開されるカーチェイスで有名な(「腕白王子の大蛇退治」の龍との格闘シーンも)アニメーターの大塚康夫が亡くなったそうですね。

プロフェッサーも観ておられた「ルパン三世first」において、当時、実写作品でさえ排莢(空になった薬莢を銃身から排出する)場面は描かなかったのに、正確に描写していて驚きました。
ボルトアクションの銃では、ちゃんと一発撃つ毎にボルトを動かしていたり。

「ルパンfirst」は視聴率も悪く23話で打ち切りに‥。「カリオストロの城」も興行収入はダメでした。日本人がまだ、アニメーションの鉱脈に気付く人が少なかった時代でした。

今では弾丸や、弓の矢、刀の白刃もCGで描くので、殺陣では役者が弓の弦だけ引っ張ったり、柄の部分しかない短い刀を持ってチャンバラしとりますよ(笑)

アニメといえば、今年のアカデミー賞は、実写ノミネート作品に「ノマドランド」以外観るべきものがなく、アニメ部門のほうがアードマンスタジオの「羊のショーン」など面白そうですね。
オカピー
2021年03月16日 21:33
浅野佑都さん、こんにちは。

>ハイ、覚えてます、これですよね!

よく探し出しましたね。懐かしい。
しかし、曲ばかり聴いていたので、画面は碌に覚えていません^^;

>カッティング・ギターが新鮮な感覚で。でも、
>本来の彼らはシンセサイザーを前面に出すグループでした・・。

格好良かったなあ。
シンセによるサビ部分も痺れました。
当時はシンセを活用するグループがタケノコのように出てきましたね。その中でもニュー・ロマンティックと言われて、まあデュラン・デュランなどと同じグループに属するんでしょうね。

>アニメーターの大塚康夫が亡くなったそうですね。

情報ゲットの早いこと!

>排莢(空になった薬莢を銃身から排出する)場面は描かなかったのに、
>正確に描写していて驚きました。

僕は驚くほど精通していなかったので驚きませんでした(笑)が、珍しいと記憶に残りましたよ。

>「ルパンfirst」は視聴率も悪く23話で打ち切りに‥。

10年がとこ早かったのかもしれませんねえ。

>アニメ部門のほうがアードマンスタジオの「羊のショーン」など面白そうですね。

「ひつじのショーン」の映画版第一作が偶然に(笑)レコーダーに入っているので、観てみましょうかねえ。