映画評「ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2019年アメリカ映画 監督グレタ・ガーウィグ
ネタバレあり

ルイザ・メイ・オルコットの小説も読んだことがあるし、過去三度日本で劇場公開された映画版のいずれも見ている。しかし、本作は時系列が錯綜する作り方をし、自立する女性の高い意識がより強調された、極めて21世紀らしい内容という印象。
 前回「レディ・バード」で大変才気を感じさせたグレタ・ガーウィグが今回も脚本を兼ねてメガフォンを取った第二作は、前回以上に上出来と大いに感心させられた。

南北戦争が始まる直前(1861年?)から1869年くらいまでのアメリカ東部が舞台。長女メグ(エミリー・ワトスン)、次女ジョー(シアーシャ・ローナン)、三女エイミー(フローレンス・ピュー)、四女ベス(エリザ・スカンレン)の四人姉妹の半生とその喜怒哀楽(生活感情)が、ジョーの出版社に持って行く小説の内容として紹介され、特に終盤はジョーの恋模様が出版社社長の意見により左右されるというメタフィクション的な面白さがある。

原作に詳しい人は姉妹の順番が違うと思われるだろうが、僕は1949年の「若草物語」同様に三女・四女の順番が変えられていると思う。
 猩紅熱からの影響から完全に抜け切れずに遂に亡くなってしまうベスは、演ずるエリザ・スカンレンの実年齢から言っても或いは見た目から言っても明らかに幼く、演ずるエリザは49年版のマーガレット・オブライエンとどこか重なる。グレタは原作ではなく49年版に則っているという気がする次第(AllcinemaのKE氏に全く同意)。

時系列が錯綜して多少解りにくいところもあるが、内容把握には大きな問題がなく、寧ろグレタが才気を発揮して縦横無尽にお話を進めている印象を覚える。

その中でも、当時のアメリカ中上流社会の男女交流機会の為に大事であったのだろう、ダンスが狂言回し的に使われてい、ベスの悲話はあるものの、全体として明朗な印象を残す。ダンス場面重用の効果でありましょう。

画面では、姉妹が左右逆方向に歩くところを繋ぐマッチカット、アルフレッド・ヒッチコック「疑惑の影」(1943年)と同様に寝そべっている逆向きの二人を繋ぐマッチカットが印象的。
 ヒッチコックの場合はそのマッチカットにより名前が同じだが性格は対照的ということを示していた。そこまで凝っているとは思われないものの、なかなかやるわいと思わされる。

アメリカには優秀な俳優監督が少なくないが、彼女は相当本格的だ。クリント・イーストウッドのようになるかもしれない。

儒教の影響の強い極東と違って、欧米では兄弟の順番が解りにくい。兄・弟あるいは姉・妹の区分を示す単語がないのは白人社会では子供の順番が極東ほど重要ではないということだろう。その代わりに羊には年齢雄雌によって違う単語がある。羊が大事であったと想像されます。

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この記事へのコメント

モカ
2021年02月22日 19:53
こんばんは。

>原作に詳しい人は姉妹の順番が違うと思われるだろうが、僕は1949年の「若草物語」同様に三女・四女の順番が変えられていると思う。

 これは多分・・ですが、原作通りの姉妹の順番だと思います。
 確かに演じる女優の年齢は逆ですし見た目も逆っぽいですが、監督が四女エイミーに敢えて逞しいガタイのフローレンス・ピューを起用したのにはそれなりの彼女の思うエイミー像があったのです。
いわゆる「若草物語」(little women) だけじゃなく次の
good wives (昔の本を出して来たら「愛の四少女」というタイトルでした)を読むとE・テイラー演じたエイミーじゃないエイミーが書かれています。

お時間があれば、
 Greta Gerwig's Little women Gives Amy March Her Due
の記事を読んでみてください。(かくいう私は全部読めてませんが。すいません。今後少しづつでも頑張って読むつもりです。)

 この四姉妹は原作では物語のスタート時点で上から16、15、
13、12歳とほぼ年子です。 三女ベスが極度の恥ずかしがりやで学校にも行けない子だったのに対してエミリーはおませでちょっと虚栄心の強い子という設定でしたから1歳しか違わなければ知らない人が見たらどっちが上か下かはわからないでしょう。
 念の為、この映画を英文で当たってみましたが、やはりエイミーはyougest sister でベスがyounger sister になっていました。

 余談ですが私の母も義母も4人姉妹でしたが若い頃の姉妹の写真を見たらマーチ家よりも年齢に開きがあるにも関わらず見た目と歳の順番は関係ないみたいでした。

ま、こんな細かいことはどっちでもいいんですが、いい映画でしたね! 私、劇場でウルウルしてしまいましたよ。まさか若草物語で泣くとは・・・たまに映画が原作を超えたと思える事があるのですがまさにこれがそうでした。
オカピー
2021年02月23日 08:51
モカさん、こんにちは。

>これは多分・・ですが、原作通りの姉妹の順番だと思います。

なるほど、そうかと思われます。
 ただ、すると、エリザ・スカンレン(1999年生まれ)の起用が気に入らなくなります。病弱で内気に見せるにしても実年齢が3,4才上の女優が良かったのではないでしょうか。演技的に不満はないですが。

>私の母も義母も4人姉妹でしたが

上記と矛盾する意見となってしまいます(笑)が、そんなものかもしれませんねえ。
 亡母は5人姉妹(9人姉弟のうち)の三番目。残念ながら若い時に揃った写真は見たことがないですね。年を取ってからのは無数にあります(但し長女は二十代で嫁ぎ先の富山で死亡)。
 1月に叔母の旦那(義叔父)の葬儀があり、参列した義姉は、叔母が亡母にそっくりになっていて感慨を覚えた、と言っておりました。コロナの関係もあって僕は遠慮したわけですが。

>まさか若草物語で泣くとは・・・たまに映画が原作を超えたと思える事があるのですがまさにこれがそうでした。

実に立派な作品です。モカさんにおかれては、具体的にどこが胸を打ちましたか?
2021年02月23日 17:47
<彼女は相当本格的だ。クリント・イーストウッドのようになるかもしれない

私もそう思います!
今作は 1月にシカゴで、DVDで、そしてWOWOWで3度鑑賞しましたが、
毎回、唸らされました...

オカピー
2021年02月23日 20:30
onscreenさん、こんにちは。

>今作は 1月にシカゴで、DVDで、そしてWOWOWで3度鑑賞しました

僕も頑張って三回くらいは見ないと^^
保存版を作ったから、いつでも見られるのだけど、なかなかやらないのが僕の悪い癖。
モカ
2021年02月23日 22:03
こんばんは。

>実に立派な作品です。モカさんにおかれては、具体的にどこが胸を打ちましたか?

 また観てしまいました! (笑) 私もこれで通算4回目です。
 立派ですが立派そうな振りをしていないところがまた良いです。
 二つの時間軸の繋げ方が秀逸でしたが、原作をまったく知らない人は少々面食らうかもしれませんね。 
 実は私は過去の映画化作品を全く見ていませんでした。
 若草物語に限らずミュージカルらしき「あしながおじさん」や
アニメやカナダのテレビ局製作の「赤毛のアン」やらは意識的に避けていました。
今回はこの監督とシアーシャ・ローナンという事で観る前から期待値が上がっていましたが、期待以上の出来でした。 最近やっと49年版だけは観ました。
 最後に読んでから50年以上(笑)たちましたので原作も再読しようとしましたが、途中で「もういいわ」となってしまいました。 原作は何というんですか? ピューリタン色? が強いです。 それよりオルコットの伝記のようなものを読みましたがそちらの方が興味深かったです。

 やはり一番胸を打ったのは “ベスの死” ですね。
 それ以外は色んな原作のエピソードが出てくるたびに50年ぶりなので懐かしくて涙がでてきたのです。ただのエピソードの羅列ではなくて映画の中で人が生きているというか血肉が通っているからこそちょっとしたエピソードまでが愛おしかったです。

 49年版は調べてみたら4姉妹を演じた女優さんたちの年齢差がすごいですね。

オカピー
2021年02月24日 18:31
モカさん、こんにちは。

>原作をまったく知らない人は少々面食らうかもしれませんね。 

原作も過去の映画化作品二本を観ていても、
多少こんがらがりましたからね^^;

>原作は何というんですか? ピューリタン色? が強いです。

忘れましたが、そうだったかもしれませんね。ピューリタンとか、日本で言えば儒教精神とか、面倒臭い感じ。
 評価したいところもありますが、自民党男性議員が“やっぱり演歌が良い”なんて言うのを聞くと、笑ってしまうと言うか、泣きたくなると言うか。彼らの言う演歌というのは、女性は表に出るなってという世界でしょ?

>やはり一番胸を打ったのは “ベスの死” ですね。

おおっ、それを聞いて安心しました。事前にそう言おうかと思ったのですが、余りにベタと言われそうで、止めたのでした(笑)。
 他の姉妹たちとの生活やその感情を描いた後の死に、観ている僕の内面においても感情が渦を巻き、胸に迫りました。
onscreen
2021年02月28日 11:31
オカピーさん

<僕も頑張って三回くらいは見ないと^^

いやいや私も3回が3回とも「どうせ若草物語だろ」気分が抜けないで
見終わって始めて「まいりました」なので、間を空けないとそりゃ辛杉(笑)

オカピー
2021年02月28日 21:58
onscreenさん、こんにちは。

フォロー、有難うございます。<(_ _)>