映画評「黒い賭博師 悪魔の左手」

☆☆★(5点/10点満点中)
1966年日本映画 監督・中平康
ネタバレあり

誘惑」が中平康のテクニックが存分に観られて楽しかったので、またプライムビデオでの無償鑑賞でござる。
 中平監督はシリーズ(氷室浩次シリーズ?)第6作その名も「黒い賭博師」を撮っていて、007やビリー・ワイルダーをムード的に引用してなかなか面白かった。本作はシリーズ第8作にして最終作。

イスラム教を国の宗教とする東南アジアの小国パンドラ。その王様を精神的に支配する賭博大学の “教授”(二谷英明)は賭博産業で儲けた金で水爆を作り、強国に伍しようとしている。それには賭博師・氷室浩次(小林旭)をやっつけ日本に進出する必要があり、盲目の賭博師、子供の賭博師(ジュディ・オング)、老婆の賭博師(原泉)を次々と繰り出す。
 この作戦を狂わせるのが王様(大泉晃)の第三夫人チューリップ王妃こと春うらら(広瀬みさ)で、王が“教授”に騙されていると知り、氷室に接近するのである。彼に冷や水を浴びせられ続けている暴力団の親分(神田隆)も、彼を仕留められては元も子もないので、一時的に彼と協力せざるを得なくなる。

という対決の図式で進行する犯罪映画。
 と言っても上記梗概を読まれても解るように誠に荒唐無稽な内容で、親分や第6作にも出て来た刑事(谷村昌彦)は完全なコメディー・リリーフ要員である。

作品の性格としては、賭博映画の世界を007的に大袈裟に展開させたと思えば間違いない。特に、競艇場で子供賭博師が殺された後に氷室と王妃がモーターボートで逃げ出す辺りは完全に007の世界でござる。
 しかし、惜しいかな、追手との地理的関係から言ってあれほど簡単にボートに乗れるとも思えず、呼吸的にも間が抜た感じが強い。中平というより脚本の問題である。

これを筆頭に、前回同様「シャレード」を思い出させるビルでのアクションがあり、それ以外にもパロディーに横溢している。
 宗教上の理由で豚を嫌う王様がトランクス一つで逃げ出すシークエンスでエースコックの “ぶたぶた子豚”の音楽が流れ、子供が “アベベ”とはやし立てたりするなど、はじけ方があの時代としては実に先鋭的。第三王妃はデヴィ夫人がモデルらしい。

三人の賭博師の顔触れが相当に個性的でいずれも面白く、この映画の一番の殊勲と言っても良いくらい。ハイライトは老婆賭博師との一騎打ちで、切り返すたびに対峙する氷室と老婆のクロースアップ度が増していくという見せ方が技術的に楽しい。
 地味な老婆役の多い原泉には珍しい役だが、松重豊に似ているなあと思い、血縁関係がないのか思わす調べてしまった。広瀬みさという女優も美しい。

総じて楽しい映画ではあるが、余り調子に乗って高得点を進呈するのは品がないので、このくらいの☆★にする。

TVに追い込まれた邦画界は、この辺りから自制的な態度が吹っ飛び、何でもありの混沌とした時代が70年代初めまで続いた。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 1

ナイス

この記事へのコメント