映画評「風をつかまえた少年」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2019年イギリス=マラウィ合作映画 監督キウェテル・イジョフォー
ネタバレあり

相変わらず実話ものが多い。しかし、本作は、アフリカの小国マラウィが舞台なのが興味深く、監督が男優キウェテル・イジョフォーの初監督作というのが注目に値する。

2001年マラウィは旱魃に襲われる。
 14歳くらいに見える主人公ウィリアム・カムクワンバ君(マクスウェル・シンバ)は、やっと学校に行き始めたかと思ったのも束の間、旱魃の影響で収入が激減して授業料を滞納(マラウィは8-4-4制。義務教育は無償なので、日本で言えば高校に当たるのだろう)して授業に出られなくなる。
 廃棄場でバッテリーなど色々なものを発掘、先生の自転車のダイナモに興味を持ち、風力発電でモーターポンプを動かし、村にある井戸から給水できないかと考え始める。姉と密会している先生の弱みにつけこんで(笑)校長に内緒で図書館の本を読むことを認められ、やがて風で起こした電気でラジカセを鳴らすことに成功する。
 しかし、最終的にポンプを稼働させるだけの電力を得るには自転車の(ダイナモ付き)タイヤが必要なのである。極貧の部落では富豪に当たるのであろう、唯一の持主である父親トライウェル(イジョフォー)に談判するが、他のエピソードから推して不器用なところの多い父は因循な考えから抜け出せず、息子の発案を一顧だにせずに拒否する。北部へ移動するという友人たちと交渉しても進捗しない。
 愛犬が餓死し、ウィリアム君がお墓を作っていると、父親は遂に現状打破のため息子のアイデアを支援することを決心する。

イジョフォーは、その後の活動よりそれに至るまでの過程にこそ価値を見出したのであろう、その後の成功談は一気呵成に進む。

日本の鑑賞者におかれては、彼がテーマと考えて注力し丹念に描いたにちがいないマラウィ貧民の苦労とウィリアム君が科学の力を信じて信念を通す思いを十分汲むことなく、それまでがつまらないと仰る方が多い。
 しかし、成功の部分だけなら映画を観ずに、彼が出演したTEDの講演(NHKがかつて放映していた「スーパープレゼンテーション」で放映されたらしい)でも観る(聞く)か、本の一部でも読めば良い。
 多分に面白いとは言い難いところもあるが、それなしには成功部分の面白味も感動も意味を成さないのは自明。その部分をもっと面白くできる可能性はあったかもしれないが、なくもがなのような批判は批評として成り立たないであろう。

映画批評論はさておき、脚本・演出を兼務したイジョフォーとしては、章形式にした脚本の方が成功している。演出は、それに沿ってなかなか堅実にこなしているという印象。

小学校に上がる前から地図帳を眺めるのを趣味としていた。そのピークは1960年代後半。その頃独立国は100か国余。モザンビークや南ローデシア(現ジンバブエ)も独立前だったが、小国ながらマラウィはもう独立を果たしていた。

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