映画評「ゼイ・シャル・ノット・グロウ・オールド」

☆☆☆☆★(9点/10点満点中)
2018年イギリス=ニュージーランド合作映画 監督ピーター・ジャクスン
ネタバレあり

ピーター・ジャクスン監督が、イギリス帝国戦争博物館に所蔵されていた第一次大戦西部戦線の映像をカラー化し音もつけて再編成した記録映画でござる。
 映像にかぶる発言は、実際に出征した元兵士のものということである。どうもリアルと思った。第二次大戦直後くらいに収録されたものではないだろうか? その他の音は、音を入れられなかった時代のフィルムに、現在の映画人が想像して付けたもの。実に自然な出来に感心した。

さて、僕はモノクロのドラマ映画をカラー化するのは反対である。監督はモノクロ故の撮り方やライティングをしてきた筈なので、監督の狙いとは違う結果を出してしまう可能性があるからである。
 しかし、戦場の記録など純記録映画については全く逆の思いを持っている。モノクロの場合、スクリーンの中で進行している一種の神話状態のものが、色が付くことによって極めて現実感をもって迫る。極端な言い方をすれば、動く人々がスクリーンから飛び出て来る。本作などは正にそれで、確かにこれらの人は実際に存在した人であるという感銘をもたらすのである。

色を付けただけでなく、フィルムに残ったノイズなども取り除いたと思うが、いずれにせよ、オリジナルの高画質にビックリ。いくら現在の技術をもってしても元が悪ければ限界がある。

内容的にも、爆発の場面で一部CGかという箇所が散見される以外は本物の迫力。

トイレでお尻を出している画像が珍しく、戦場における日常が大量に語られ興味深いところが多い。出征前の思い、戦闘前の日常、戦闘、帰還という構成であるが、戦場での生活も悲惨なら、必ずしも歓迎されない故郷での扱いも悲惨と言って良い。彼らの言葉を聞けば、誰も戦場になど行きたくなくなるだろう。

元兵士の言葉の中でインパクトがあったのは、音を聞く前に負傷しているという体験。確かに銃弾は音速よりも早く飛ぶものも多いので、体験していない人間には語れない言葉と納得するしかなかった。

第一次大戦は言わばそれまでの戦いからの過渡期。それまでになかった飛行機や戦車や毒ガスが活躍する一方で、ナポレオン戦争時代と大して変わらない砲弾合戦や白兵戦もある。その辺も垣間見える。そして、現在の戦争は人間の出る幕はどんどん減っている。それはそれで恐ろしい。

塹壕の画像・映像が反戦映画の傑作「西部戦線異状なし」(1930年)を思い起こさせる。

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