映画評「パコ・デ・ルシア 灼熱のギタリスト」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2014年スペイン映画 監督クーロ・サンチェス
ネタバレあり

日本の民謡以外のジャンルなら何でも聴きたがる音楽ファン(実際に全てを聴く時間はないが)なので、ロック以外のギタリストも名前だけは結構知っている。1970年代~80年代にかけて、パット・メセニー、アール・クルー、リー・リトナー、アル・ディ・メオラというフュージョン系ギタリストを知り、ディ・メオラから本作の主役であるフラメンコの速弾きギタリスト、パコ・デ・ルシアも知った。ディ・メオラやパコからラリー・コリエルやジョン・マクラフリンも知ったが、彼らは本作の中盤以降において実際に絡んでくる。

つまり、フラメンコのギタリストだった彼が70年代後半にフュージョンに接近したということである。何度か壁を突き破って来た経験の中でも重要な出来事だったということが本人の言から伺える。その前に、尊敬するニーニョ・リカルドの曲の演奏に満足していた彼が、フラメンコ・ギタリストの大物サビーカスからの指摘で、独自の曲を開拓していった事実にも触れられている。12歳で兄ペペとのツイン・ギターでレコード・デビューするまでの幼少時代のエピソードも彼のファンなら興味深いであろう。

彼の色々な時代のギターが一通り聞けるのが音楽ドキュメンタリーとしての楽しみかもしれないが、動画以外では写真をごくゆっくりとズームするところが結構あり、これが一種味を生んでいる。

また、孫との会話などを見て(聞いて)映画自体にちょっと家族的な印象を覚えるところがある。クレジットを調べるうち、この映画を撮った監督はパコの息子で、どうも孫の父親である。なるほど、それでこの映画はどこか家族的であったのだ。

この映画が完成した年にパコは満66歳で客死する。音楽家人生の後半で、彼はラリー・コリエルに訊いて即興演奏を身に着けるが、正にそのその演奏のように即興的な死に方であった、というのが息子である監督の感想。なかなか上手いことを仰る。

万人向けとは言えないが、音楽ファンを自任する方であれば、パコ・デ・ルシアやフラメンコ・ギターのファンでなくても一定以上の興味を覚えさせる内容とは思う。

本名をフランシスコ・グスタボ・サンチェス・ゴメスという。サンチェスが苗字なのか? どうもスペインやポルトガルの名前は判読が難しい。

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この記事へのコメント

モカ
2021年01月04日 17:52
パコ・デ・ルシア 
20年くらい前に来日公演を聞きに行きました。
自分の演奏内容にかなり厳しい方だったようですが、あの時私が聞いた演奏をご本人はどのように評価されていたのかは分かりませんし、聞いているこちらもこの手の音楽に関してどうのこうのと言えるような耳を持ち合わせていませんでした。
有名なアルバム「2筋の川」しか持っていなかったので、どの演奏も素晴らしけれど曲の違いが分からなかった、というのが正直なところでした。
でも存在自体が素敵な方でしたね。とても貧しい家庭だったようですが、貴公子のような品があって・・・才能は品を創る?

ラリー・コリエル
懐かしい! まだフュージョンという言葉も知らなかった70年頃、確かジャズとロックの融合とか言われていた頃よく聴いてました。レコードが確か3,4枚あるはずです。今聞いたらどんな感じなんでしょう。探してみます。
当時は「ラリー・コーイエル」と表記されていましたので私の中では今でも「コーイエル」です。
もう亡くなりましたね・・・なんだか不思議な気がします。
こちらがなんてこともない日常生活をバタバタと送っている間に自分の音楽を探求してたくさんの作品を残して逝ってしまう人もいて・・・
オカピー
2021年01月05日 19:05
モカさん、こんにちは。

親戚にご不幸がありちょっとバタバタしております。

>曲の違いが分からなかった

ギター一本といった音楽スタイルで、よく知らない曲ばかりでは、そうなるでしょうねえ。

>とても貧しい家庭だったようですが

父親がギターが弾け、その影響で子供たちも弾け、12歳で兄と共に初レコーディング。芸は身を助く、を地で行く話ですね。僕は自分のテープレコーダーになら録音したことがありますが(笑)

>70年頃、確かジャズとロックの融合とか言われていた頃

ジャズ・ロックと言う言葉もありました。当初はクロスオーバーと言っていて、やがてフュージョンに置き換えられたんでしたね。

>ラリー・コーイエル

綴りを見る限り、英語発音ではそちらのほうが近い感じもします。