映画評「多十郎殉愛紀」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2019年日本映画 監督・中島貞夫
ネタバレあり

任侠映画が苦手なので中島貞夫監督には余り関心がない。20年ぶりの劇映画と言われても感慨は起きないが、今回は時代劇なので興味を持った。多分もう少し早く、時代劇が衰退する前に監督を始めていたら時代劇を撮った人なのだろう。

幕末の京都。親の借金を背負いきれず脱藩した長州藩剣士・多十郎(高良健吾)は貧乏長屋に暮らし、妙齢美人おとよ(多部未華子)が営む居酒屋の用心棒を務めているが、剣の腕を買う藩士たちが尊王攘夷運動に加わるよう依頼に訪れる。腹違いの弟・数馬(木村了)もそれを願ってやって来る。
 京都にやって来る侍たちの行動を見張っている京都見回組は新選組をライバル視し、手柄とすべく目を付けた多十郎の捕獲に躍起になる。おとよの思いを知った多十郎は、目を負傷した数馬をおとよに託し、彼の立ち位置を知らずに追いかけて来る見回組とチャンバラを繰り広げながら逃走する。

というお話で、見どころは後半の大部分を成す逃げながらのチャンバラ、見応えがある。殺陣そのものより、躍動感のあるカメラがなかなか良いのだ。本当の時代劇を残したいという監督の意欲がよく伝わって来る。

問題はお話の方で、93分という短尺は良いが、内容に比していかにも短過ぎて寸足らず、映画全体が字足らずである。起承転結の転がない感じでいつの間にかチャンバラに入っていく。従って、最後の逃走に殉愛というムードが希薄で、どうにも物足りない。捕縛されたところで唐突に終わるのは悪くないが、逃走と殉愛が結びつかないのがまずいのである。それには前段で多十郎とおとよとの関係にもっと時間を割く、もしくはもっと掘り下げる必要があっただろう。

総合的に判断して、良い時代劇を世に送りたいという意欲を満足させるなら、オリジナル脚本に拘泥せず、日本には無数にある時代小説からピックアップして専門の脚本家に脚色させたほうが良かったのではないかと思う。優れたカメラワークと時代劇にふさわしい真面目さを買って★一つ分おまけする。

結果として、中島監督は大映に入った方が良かったのでは?

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