映画評「黒い司法 0%からの奇跡」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2019年アメリカ映画 監督デスティン・ダニエル・クレットン
ネタバレあり

ブライアン・スティーヴンスンという黒人弁護士が自分の活動を記したノンフィクションの映画化。第二の「アラバマ物語」(1963年)と言うべき内容で、若き日の著者が主人公である。

1980年代後半から90年代半ばくらい。ブライアン(マイケル・B・ジョーダン)は、インターン弁護士の時に人権的弁護士団体から刑務所に派遣されて同じ年齢の死刑囚に出会ったことから、冤罪率の高いアメリカの犯罪者を救う組織を立ち上げ、シングル・マザーの白人エヴァ・アンスリー(ブリー・ラースン)を事務役として迎え、白人重犯者マイヤーズ(ティム・ブレイク・ネルスン)の不自然な証言を唯一の証拠として死刑判決を下された黒人の囚人ウォルター・マクミラン(ジェイミー・フォックス)を救う案件に取り組む。
 並行して精神障碍のある黒人帰還兵について奔走するが、陪審員に障碍を隠蔽した裁判の結果は覆らず死刑となる。
 丁寧に接した結果マイヤーズは自分の証言が強制された嘘であると告白、漸く再審への道のりとなる事実審裁判所でも同じ証言をするが、判事はテキトーな理由で原判決を支持する。ウォルターとの精神的絆を確認したブライアンは州最高裁に訴え、これが認められる。ところが、結局審理は行われずにお仕舞になる。検事(レイフ・スポール)が再審請求を認めたのである。そして再審の結果彼の無罪か確定する。

邦題から結果が見え見えなのでストーリーを最後まで記した。お許しあれ。

脚本も演出もそうテクニカルではないものの、実話に依るがっちりした物語をしっかりと映画化している。問題意識の高いお話そのものの持つ強みがほぼ本作の全てではないだろうか。

裁判の構図は「アラバマ物語」に似るが、弁護士が黒人なのが現在的であり、途中経過はともかく結果も現在的である。
 冤罪を被る人が黒人であることを考えれば、この作品のテーマは冤罪(を晴らすこと)ではないだろう。冤罪を生み出す米国特に南部白人の黒人に対する激しい差別意識を焙り出すのが眼目であるはずである。
 犯人をでっち上げる時は常に黒人が対象となり、再審するか否かを問う事実審裁判所の判断も容疑者が白人であれば再審決定であったであろう。弁護士に対する嫌がらせも彼が黒人でなけれ大分違ったであろう。今さらながらアメリカ南部に根付く差別に義憤を禁じ得ない。

唯一の清涼剤は “くそったれ” と言われた検事の翻意である。ブライアンが事前に彼に “あなたの良心を信じる” といった旨の話をして、それが彼を変心させたのだと僕は思いたい。映画的に加えた可能性の高いエピソードと感じるが、そのそこはかとなさが気に入った。

演技陣では、重犯者役のティム・ブレイク・ネルスンが面白い。

長い事、邦題は情緒的であり、内容を示すと言っているが、本邦題はネタバレも良いところ。“奇跡” は大衆の感情に訴えると同時に、結果を教えてしまう。甚だ良くない。

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