映画評「武蔵-むさし-」

☆☆★(5点/10点満点中)
2018年日本映画 監督・三上康雄
ネタバレあり

僕は吉川英治の小説「宮本武蔵」を読み、その映画バージョンも幾つか観ているので、本作の流れは特段の説明がなくても理解できる。しかし、全く知らない人には明らかに説明不足で、世評が伸びないのはやむを得ない。

大阪の陣直前。士官の一助になるかと若き武蔵(細田善彦)が、足利将軍家の指南役を務めたこともある剣術の名門吉岡家に挑み、当主の清十郎(原田龍二)に先に打たれて試合に負けるも、相手に重傷を負わせる。これに怒った弟の伝七郎(武智健二)が重傷を負った兄の代りに武蔵に挑戦するも撲殺される。吉岡家は一家を挙げ、清十郎の幼い息子を立てて門弟たちを揃えて闘いを挑む。有名な一条寺の決闘である。
 他方、三十歳以上年配の佐々木小次郎(松平健)は、豊前国小倉藩藩主細川家重臣沢村(目黒祐樹)に見出され、同家の剣術指南役になるが、やがてその言動を過剰なものと考えた沢村らによって、評判の高い武蔵との闘いにより、舟島での闘いを強いられる。

暫く並行して進んできた二人の物語が、終盤細川家の画策により一つに結び付く。

従来の吉川英治の小説をベースにしたものより実際に近いと言われるが、この終盤は結構大胆な解釈をされているのではないか。小次郎は事実上細川家に殺されたという解釈である。

そして、映画は、これからは武ではなく知力の時代である、と言って終わる。それ自体は大して重要でないと思うが、武蔵と小次郎がそういう過渡期に生きていたということを明確にする。武蔵は半ば無駄に剣術の腕を磨いたとも言える。

監督はリアリズムに拘る三上康雄で、前回の「蠢動-しゅんどう-」同様に、短いシーンを畳みかける手法でテンポ良く進む一方で、冒頭で述べたように説明が明らかに足りない。そして、用語が難しすぎる。時代劇でも滅多に使われない熟語が頻出し、余程の歴史マニアではないと理解するに難儀するだろう。そこに加え、前回同様勧善懲悪という大衆的な興味は全く排除していることを考えると、大衆的な時代劇に慣れている人の興味を呼びますまい。

配役陣には、前回から引き続き出演している俳優が多く、若手の口舌が前回より改善されている。どちらか一本を選ぶなら、本作のほうを推奨。

武蔵は藤原家の血を引くとか? 江戸時代まで遡れる我が一族は桓武天皇に行き着く、と物の本に書いてあったが(笑)。

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この記事へのコメント

モカ
2020年12月06日 21:01
こんにちは。

>有名な一条寺の決闘である。

 え~一応地元民といたしましはここでちょっと観光案内をさせていただきたいと思います。

 京都には武蔵決闘の地と名乗る ”イチジョウジ” が2か所あるようです。 上京区の七本松(応仁の乱で有名な西陣界隈)に吉岡道場跡があり決闘跡地との看板もたっているようです。こちらは”一条寺”と書きます。
 もう一か所が左京区の一乗寺下り松で、こちらの方が有名かと思います。近くに武蔵が滝に打たれたという狸谷山不動尊や決闘前に参ったとか参ってないとか諸説ある八大神社があります。
 こちらはモカ家から徒歩圏ですので上洛された折は案内仕り候。 (あ、最近めっきり足腰が弱ってきましたので狸谷さんにはもうよう行きませんけど・・・)

 関西には定食屋のチェーン店で「宮本むなし」というのがありまして、さすがのモカも初めて看板を見たときはこけそうになりましたわ。
オカピー
2020年12月06日 22:08
モカさん、こんにちは。

>もう一か所が左京区の一乗寺下り松で、こちらの方が有名かと思います。

細かな情報、有難うございます。
コロナで外国人がいない今が、ある意味行き時なのかもしれませんが、とは言ってもなかなか実行できません。そもそも資金がないという噂も。

いや、パソコンの変換ミスでした。どちらにしても全くデタラメにはならないようですが、例によってモカさんが忘れた頃に修正しておきます(笑)

>定食屋のチェーン店で「宮本むなし」というのがあり

意味不明な命名ですが、可笑しいですね。
Wikipediaにちゃんと載っていました。知らなかったなあ。