映画評「カイジ ファイナルゲーム」

☆☆★(5点/10点満点中)
2020年日本映画 監督・佐藤東弥
ネタバレあり

“カイジ”という名前は知っているので、すっかり旧二作を観た気になっていたが、どうも最終作と言われる本作がシリーズ初見らしい。

2020年の東京オリンピックが終了して景気が冷え込んで(恐らく国の借金が問題になって円が暴落し)ハイパー・インフレが起り、失業率40%の近未来の日本では、貧乏人の一部に良い目を見せる命がけの賭け事やゲームが定着している。
 黒崎(吉田剛太郎)の経営する派遣会社に首を切られたギャンブル名人カイジ(藤原竜也)は、まず建物の上に置かれたカードを取り合うゲーム “バベルの塔” に参加する。大金を得るか次の可能性に賭けるカードを得ると、後者を選び、主催者の老富豪東郷(伊武雅刀)の願いを聞き入れ、政府が新札を発行すると共に預金封鎖を行い、閣僚などの上層部が大量の新札を独占する陰謀を阻止する役目を負って、同じくチャンスを掴んだ妙齢美人・桐野加奈子(関水渚)や老人の秘書たる廣瀬(新田真剣佑)と協力し合うことになる。
 それを実行するには、カイジの知恵を総動員して、“最後の審判” なるギャンブルで悪漢・黒崎と闘う老富豪を勝たせる必要があるのである。

映画のメインはこのギャンブルでの賭け引きだが、映画全体は3.5段構えの構成という感じになっていて、苦戦を強いられる老富豪側の為に、挑戦者のうち一人だけが生き残れるバクジー・ジャンプ “ドリーム・ジャンプ” にカイジが挑戦(これが0.5段)した後、いよいよ預金封鎖の阻止を実現する為の、カイジVS若き黒幕・高倉(福士蒼汰)のゴールド・ジャンケンへと進んでいく。

アメリカのYA小説の映画版と共通するディストピアの内容だが、ごく近い将来にしたのが良くない。現在の日本程度の国債発行額及び国民と日本銀行が買い占めている状況では破綻が起きない、ということが既に確実となっている為、本作のようなことは近い将来には起こらないのである。まして(今回のコロナ不況を見ても解るように)オリンピック後の不景気くらいで円の暴落に繋がるわけもない。
 経済格差が俎上に上がっているが、実際に問題なのは格差の拡がりではなく、一番税金を払い一番消費額に貢献する中間所得層が下層に流れることである。だから、本作のように40%の失業率なら国家を維持する為にこそ彼らを救うことが先決となり、本作が見せるような排除はありえず、それが解らないようなら為政者は務まらない。かくして始まりの時点で白け、やがて核と言うべき“最後の審判”の空虚な内容に退屈感が強くなる。

映画としては、どんでん返しが続く終盤で盛り返す印象があるものの、この映画のどんでん返しの内容を見ると、大騒動の “最後の審判” が茶番に過ぎなかったことが判り、夢落ちを見せられた時と似た気分を味わうことになる。勢いで見せられてしまうところがあるからまだ良いが、本作に限らず、今やどんでん返しの連続を喜ぶのは映画経験の少ない若い人くらいだろう。どんでん返しは賢く限定的に行うべし。

室内の見せ場が多いこともあって、舞台的という意見があるのは尤もで、藤原や吉田の舞台的な大仰な台詞回しがその印象を強める。その意味で、藤原の出る映画は苦手である。

という次第で、大山鳴動して鼠一匹、と言ったら言い過ぎかもしれないが、満更遠くもない気がする内容。ご苦労様でした。

俺たちに次回(カイジのアナグラム)はない。

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