映画評「今さら言えない小さな秘密」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2018年フランス=ベルギー合作映画 監督ピエール・ゴドー
ネタバレあり

フランス映画は概して人間の弱みをコミカルに描いて淀みがない。その数に入れたい本作はジャン=ジャック・サンペの絵本を映像化したコメディーで、監督は初めて触れるピエール・ゴドー。

主人公ラウール・タビュラン(ブノワ・ポールヴ―ルド)が家業の郵便配達を継がなかったのは、実は自転車が乗れないからだが、小学生時代の坂道作戦の冒険のせいで自転車曲芸乗りの名手と誤解されたまま30年の年月が経つ。その事実を告白したが為に相愛の娘に振られた後、自転車に乗らないことを結婚の条件としたのに乗じてマドレーヌ(スザンヌ・クレマン)と結婚し、二児に恵まれた現在、自転車修理で名を成している。
 ところが、町民たちの顔という写真シリーズを撮っている写真家エルヴェ(エドゥアール・バール)が町にやって来て、マドレーヌが自転車に乗る写真を撮るという計画を発案した為、タビュラン氏は阻止しようとカメラを一台失敬する。ところが、それが父親からの遺品であるという二重の失敗と判明、もはや逃げ道がないと遂には自殺覚悟の(小学生の時にやった)坂道作戦を敢行する。
 エルヴェが崖を飛翔する瞬間を捉えた写真が評判を呼んで、彼は重傷を負うもまたまた英雄になってしまう。こうなったら死ぬまで嘘を付き続けようと決心をする。ところが、写真家が実はタイミングが解らない為に静止写真以外撮れず、自転車の写真は偶然撮れたものと告白、重荷の降りたタビュラン氏も自転車に乗れないことを告白する。妻も催し物の時に少女時代からの彼にまつわる過去を思い出し、夫が自転車に乗れないことに気付く。

シチュエーション・コメディーは大概嘘か誤解もしくはその両方があって成り立つ。その意味で、全編誤解と嘘で成り立っている本作は、言動から人間の裏や秘密(一種の嘘)を見せようとした昨日のイタリア映画と違って、正統的な(シチュエーション・)コメディーである。

罪のない嘘だから実にほのぼのと進行、しかも一応妻と写真家が事実を知ってすっきりした終わり方をするのが良い。尤も、町民がこの後彼の秘密を知ったかどうかは定かにあらず。他人(ひと)を傷つける嘘は良くないが、彼の嘘は結果的に町民をハッピーにしているのだから、敢えて告白しないほうが良いかもしれない。

映画としてはな~んということもないが、気軽で後味の良い作品を観たい人にはお勧め。

一つ疑問あり。自転車乗りが好きで、ツール・ド・フランスの区間優勝をした町の英雄と結婚した前の恋人は町に住んでいるのに、どうして彼が自転車に乗れないことを誰にも告げない? 他の町民のことを考えた? 

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