映画評「パーソナル・ソング」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2014年アメリカ映画 監督マイケル・ロサット=ベネット
ネタバレあり

音楽絡みのドキュメンタリーだが、主役は音楽家ではなく、認知症や精神障碍、身体障碍を患う人々である。これらの人々に、若い頃聴いた音楽を聴かせると人間的に再生する、という効果を次々と見せていく。これがもうビックリというに尽きる。

90代の黒人男性は認知症で全く無気力、話も殆どしなかったのに、若い頃に聴いた曲を聴くと目を見開き、体を動かし、インタビュアー(監督マイケル・ロサット=ベネット)の質問に正確に答え出すのである。この場面のインパクトは圧倒的で、彼の人間性の復活にまぶたが熱くなった。

ここに出て来る例はいずれも感動的だが、他に印象深いのは70代くらいの上品な白人女性の目の輝かせ方。聞いたのはビートルズの「ブラックバード」「抱きしめたい」「ヘイ・ジュード」、ベン・E・キング「スタンド・バイ・ミー」。他の患者で、ビーチ・ボーイズの「アイ・ゲット・アラウンド」もありました。

本作の社会派映画の面としては、ダン・コーエンという男性がi-Podを使った音楽治療を促進する意義を知らしめることにある。全体としてはまだまだ僅からしいが、薬物を以って全く成し遂げられないことを実現する音楽治療が段々認められてきたことは実にホープフルだ。

一方、ごく大衆的な僕らに意味があるのは、音楽の人間に与える素晴らしい効果である。この映画を観れば、死んだ後どうするのよと家人に言われる僕の少なからぬCDライブラリーも冷たい扱いを受けなくなるだろう。7,8年前録り溜めたビデオは相当捨てたけれど、CDは金輪際捨てない。死んだ後は勝手にしてください。

殆どのドキュメンタリーがそうだが、作り方より内容でござる。

本作鑑賞を奨めてくれた常連モカさんに、僕のパーソナル・ソングは何か、と訊かれた。実に難しい。基本的には若い頃聴いていた音楽ということになる。ビートルズ全体がそうとも言えるが、本作に出て来るような状況に追い込まれた時に聴くなら「恋する二人」が良いと思う。小学生の時以来好きなのは、何故か唱歌「鎌倉」。鎌倉時代にロマンを感じていたから好きになったのか、この歌が好きだったから鎌倉時代が好きになったのか解らない。

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この記事へのコメント

モカ
2020年12月17日 17:31
毎度ありがとうございます。

実はこれは劇場で近日上映の予告編を観ているんです。
常日頃老後用の音楽と映画を用意しておかねばと思っていたので、予告を観ても驚くというよりは音楽の効用についても「そんなこと百も承知やわ」くらいに思っていました。
それで、市内では一番遠い映画館だったので劇場鑑賞はパスしてレンタルで観ました。 
いや~すいません! 侮っておりました! ここまで感動の場面展開だとは思ってもいませんでした。目頭が熱いどころか泣けて泣けて・・・思い出しても泣けてきます。 
  viva la musica!!!
どんな時代にもその人なりの思い出の音楽はあるんでしょうが、やはり私たち(一緒にさせてください)いい時代に生まれましたね。

 「鎌倉」って初めて聞きました。知りませんでした。
明治の唱歌ですか? やっぱり年齢詐称疑惑が・・・(笑)
 私の場合このタイプの曲だと「みかんの花咲く丘」でしょうか。 本当は同じ作詞者の「蕎麦の花」も良いんですが見つかりませんでした。 
 倍賞千恵子の歌唱がよろしいです。
オカピー
2020年12月17日 22:29
モカさん、こんにちは。

>毎度ありがとうございます。

今世紀に入ってから映画館で観るのは最小限にした為、新作を調べることなどすっかり止めた結果、この映画の存在すら知りませんでした。こちらこそありがとうございました。

>いい時代に生まれましたね。

最新機器に追いつかないことも多いデスが、正に良い時代に生まれました。僕は、邦楽のアップが限定的なので、YouTubeにあれほどの音源があるとは知りませんでしたねえ。CDを作る為に色々調べていくうちに、殆ど利用できないものがないと判明。これも魂消ましたなあ。

>「鎌倉」って初めて聞きました。知りませんでした。

観光ガイドのような歌曲でもあり、地方差があるんですねえ。当時の群馬県の小学校5年の修学旅行は大体江の島・鎌倉でして、この歌を聴いていた為、修学旅行で鎌倉へ行くのが楽しみでしたよ。源実朝が殺された鶴岡八幡宮へ行ってワクワク(殺された場所へ行ってワクワクというのも変ですが)しました。

>やっぱり年齢詐称疑惑が・・・(笑)

多分詐称していないでしょう(笑)

>「みかんの花咲く丘」でしょうか。
>倍賞千恵子の歌唱がよろしいです。

僕もこの曲は好きですよ。倍賞千恵子は、素直な歌い方が実に良いですねえ。
浅野佑都
2020年12月18日 01:16
 ドキュメンタリー作品にはコメントをしない(そもそも戦記物を除いてあまり観ない)というのが僕のパターンですが、この作品は心を打たれましたね。
僕のパーソナルソングは「雪の降る街を」とヨナ抜き音階の「荒城の月」ですね。

>修学旅行
ハイ、電車で行きました。群馬からは鎌倉は地理的にちょうど良かった・・当時は東海道新幹線はあっても高額で、裕福でない我が家には高嶺の花、鈍行でも電車に乗れるのは嬉しかったなぁ・・。

>鎌倉
子供のころ、祖母が歌って聞かせてくれて・・。なるほど、モカさんのように関西の方にはあまり知られてないんですね。
僕は、静御前の出てくる5番が好きで・・。

頼朝政子夫婦を前にして、母親譲りの白拍子を身重の体で昂然と舞い謡う義経の愛妾静ですが(講談調・笑)「吉野山 峰の白雪踏み分けて 入りにし人のあとぞ恋しき 」
くらいまではまだ良いですが
歌意がリアルすぎる「しづやしづ しづのをだまき繰り返し 昔を今になすよしもがな」
これは怒りますがな、頼朝さん(笑)
時間をおだまきのように巻き戻して、あの人に何度も名を呼ばれたい、ですからね。

静って、今でいうならマドンナかレディ・ガガというところでしょう・・。二首とも本歌があるのですが、あの場所でやるか普通?(笑)半端ではない勇気と才芸(それと美貌)を持った日本女性の理想なんだと思いますね・・。
モカ
2020年12月18日 17:39
こんにちは。

関西からの修学旅行は昔は箱根、鎌倉、東京が主流でした。
開通したばかりの(!)東海道新幹線に乗りました。
林間学校は高野山で臨海学校は天橋立か伊勢方面でしたね。
こういうのは地域色があって面白いですね。

良い時代に育ったというのは、ビートルズを筆頭とするロックの黄金期と私の十代が重なるという時代背景もあるんですが、やはり戦争の時代じゃなかったのが一番です。
 亡くなった母が晩年お世話になった施設ではよくみんなで歌を歌ったりする時間がありました。ある時そこで歌われている歌集をみる機会があったのですが、「青い山脈」や小学校唱歌などにまじって戦時中の戦意高揚歌が載っているのを見つけました。
母にこんな歌も歌うの?と聞いたら記憶が曖昧になっていた(私は母の妹と認識されていました)母はいつの時代に生きているのやら定かではないらしく「そらそうや、国民の歌やから」みたいなことを言っておりました。
生前「物心ついた時から終戦までずっと戦争ばっかりやった」とよく言っていて、終戦時1二十歳くらいでその後ずっと働き通しだったので、どんな音楽を聞かせてあげたら良かったのかもいまだに謎です。 どんなものにも素直に喜ぶ人でしたけど(娘とはえらい違い・・・小うるさい所は父譲りです)
オカピー
2020年12月18日 19:02
浅野佑都さん、こんにちは。

>ヨナ抜き音階の「荒城の月」

「荒城の月」は僕も割合好きですが、ヨナ抜き音階って何ですか(笑)
日本調の曲調ということだと思いますが。

>ハイ、電車で行きました。群馬からは鎌倉は地理的にちょうど良かった

僕らはバスだったと思います。多分長野県に近いド田舎で高崎に出るのにも苦労するので、そうなったのだと思います。当時は乗り物酔いもせず、楽しい長旅だったような記憶がありますよ。

>僕は、静御前の出てくる5番が好きで・・。

それはちと大人っぽい。僕は、8番あるうちの3番くらいまで良く歌いましたので、この辺りの地名に大いに思い入れありデス^^

>「しづやしづ しづのをだまき繰り返し 昔を今になすよしもがな」

先月NHK教育(最近はそう言いませんが)の「100分de名著」が「伊勢物語」で、この歌の本歌が出てきましたよ。
オカピー
2020年12月18日 19:21
モカさん、こんにちは。

>関西からの修学旅行は昔は箱根、鎌倉、東京が主流でした。

僕らの高校時代は逆のコースで、東海道新幹線で奈良・京都旅行でした。群馬の公立高校ではほぼこれでしたでしょう。楽しかったなあ。
 奈良だか京都だかのおばさんに“よたってる”と言われてどよめきました。こちらで“よたっている”は“不良”の意味だからですが、確かH君が“疲れているの意味だよ”と解説したのを憶えています。僕も解りましたがね。“よたよたしている”のことだと思いますが、京都ではそう言いますか?

>林間学校は高野山で臨海学校は天橋立か伊勢方面でしたね。

林間学校は地元の榛名山(かなり近い)、臨海学校は新潟県。佐渡島が見えるところ(実際見えました)。夏風邪ひいて帰ってきました(笑)

>やはり戦争の時代じゃなかったのが一番です。

うわーっ、また読み違えました。最近バカになったかな^^;

幸い両親は共に認知の問題をすることなく逝きました。
 施設に定住することになった父親には小型の機械を買い、CDの演歌全集を持って行きましたが、結局自分では聴かなかった模様。かなり無気力になっていたようです。
浅野佑都
2020年12月19日 03:55
プロフェッサーは、アマゾンプライムにある神山誠二郎の「ふるさと」は、ご覧になりましたか?
細部まで神経のゆき届いた山田洋次の秀作「故郷」(ふるさと)と比べると、全ての面において、いかにもアベレージというか、玄人受けしない印象ですが、「月光の夏」なんか僕は好きな作品ですね。
主演の加藤嘉を始め、岐阜出身の監督が、岐阜に所縁のある岡田奈々などの俳優を使っていて、渾身と言って良い出来映えだと思います。100分と比較的短いので、リクエストいたします。
モカ
2020年12月19日 17:19
こんにちは。

>うわーっ、また読み違えました。最近バカになったかな^^;
 
 いえいえ、おっしゃている様な意味ももちろん含まれております。

☆ よたってる ☆
 使ったことがないような・・・聞いたことはあるかな?
 奈良か京都とのことですね。私は中学まで奈良で高校から京都ですのでまさに平城京と平安京をまたにかけた原住民のようなもんですが、知らんなぁ・・
 これは探偵ナイトスクープに調査依頼をしないといけませんかね。と、こんなローカルネタを東国に方に言っても通じませんわなぁ。 関西ではもうかれこれ30年程続いているお笑い系何でも調べる番組です。
 初期の傑作に「あほ」と「ばか」の使用分岐線を探すというのがありまして、これが1年がかりくらいの大調査になって、分厚い本にもなりました。
「全国アホ・バカ分布考 はるかなる言葉の旅路」今は新潮文庫から出ているようです。
かの松岡正剛も千夜千冊で取り上げていますので既にご存じかもしれませんが、面白いです。
方言言語学?に一石を投じたらしい?

>CDは金輪際捨てない。

 プレーヤーもキープしておかないといけませんね。

 
  
オカピー
2020年12月19日 22:05
浅野佑都さん、こんにちは。

>アマゾンプライムにある神山誠二郎の「ふるさと」は、ご覧になりましたか?

観ていると思うんです。
 調べたところ、IMDbに僕の採点記録は残っていないのですが、僕がまとめて投票した20年くらい前には載っていない日本映画は実に多かったので、観ていても採点が出来ていない作品もあるわけです。
 いずれにしても、無償で観られるようですので、年内に観てみます。

>「月光の夏」

これは昨年再鑑賞しました。初めてと思って観始めたら、二回目でした。最近このてが多い(苦笑)。
 地味ですが、心に沁みる良い映画でした。
オカピー
2020年12月19日 22:49
モカさん、こんにちは。

>奈良か京都とのことですね。

そうどす。
クラスの連中がぞろぞろと歩いているところで、言われました。

>これは探偵ナイトスクープに調査依頼をしないといけませんかね。

いや、昔何かを調べていて、出て来たのでタイトルだけは知っております。何故か今日のTVにも出てきましたよ^^

>「全国アホ・バカ分布考 はるかなる言葉の旅路」今は新潮文庫から

いや知りませんです。松岡正剛氏の紹介も多数になりましたから、何が何だか(笑)。この手の言語学や民俗学は面白いですね。興味ありますです。