映画評「ルパン三世 THE FIRST」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2019年日本映画 監督・山崎貴
ネタバレあり

僕は小学生の時にアルセーヌ・ルパン(やや大人っぽいが児童ものの要素も残す池田宣政バージョンが最高。国会図書館に一部あるくらいで、全く利用できないのが現状)に耽溺した人間なので、ルパンと言えば三世ではなくアルセーヌなのである。それでもTVの第一シリーズはそれなりに楽しんだし、大学生くらいになっていた第二シリーズは中学生になると共に卒業したTVアニメの中で唯一同時代的に見たアニメである。第三シリーズは余り良くなく、映画版も第三作で三世とは暫し縁を切った(三だけに)。

最近、洋画を含めて他に大した作品が多くないということもあり、人気アニメ同士のコラボであったり、実写版であったりする映画版は観た。長編ではシリーズ第7作に当たる本作は、山崎貴が監督した3DCGが話題。

戦時中にブレッソン教授が中東からみの秘宝の研究成果を明かさない為にその秘宝を狙うナチスに殺される。秘宝の扱い方を記した日記と関連するブローチを託された娘夫婦もナチスに追われて事故死する。ナチスの秘密組織に属する博士ランベール(声:吉田鋼太郎)は幸い生き残った赤子の孫娘の手からブローチだけを奪う。
 十数年後(山崎監督の話では1960年代後半の設定ということだが、それなら二十数年後だから、どちらかが間違っている)、その日記に関わる発表会が行われ、ここで警備員に扮したルパン三世(声:栗田貫一)を変装を見破ったこれまた偽警備員のレティシア(声:広瀬すず)が捉えようとするが、その隙をついて峰不二子(声:沢城みゆき)が日記を奪ってしまう。
 秘宝の中味はお話の進行につれて段々解って来るのだが、ちょっとしたブラックホールさえ起こすことのできるエネルギー装置で、幾つかのちょっとした謎解きを交えながら、ナチス残党と争奪戦を繰り広げることになる。

レイダース 失われた聖櫃」(1981年)と同工異曲で、この手のアイデアは「レイダース」以降ハリウッド映画に多く、余り有難くないものの、ルパン三世史上最大の規模と言って良い大風呂敷ぶりである。確かに2Gアニメより3Gの効果を見せやすい素材ではあるかもしれない。

ランベールの上官に当たるゲラルト(声:藤原竜也)が僕より頭が悪い(最後のブラジルの作戦は見え見えでござる)ので興醒めるが、途中から銭形警部(声:山寺宏一)がルパン一味に加わって呉越同舟ならぬ呉越同機(飛行機の類が多く出る)になる辺りはルパン三世の設定を良く知る人なら嬉しくなるはず。

アルセーヌ・ルパンをベースに考える時に映画シリーズで断然の最高作は「カリオストロの城」(何しろ、憎いが故に忘れがたいカリオストロと、アルセーヌの悲劇的な最初の妻クラリスの名前を使っていて、かのシリーズの持つ高いロマンティシズムが、おふざけも多い三世シリーズにありながらよく再現されている)で、他は問題外だが、本作はかなり差があるもロマンティシズムで同作に次ぐ。よって★一つ余分に進呈する。

昨年TVシリーズの主題歌、エンディング曲、挿入曲、映画版の主題歌を集めて一枚のCDを作った。バージョン違いなどでTV絡みだけでも50分くらいありますです。

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この記事へのコメント

浅野佑都
2020年10月08日 21:56
>池田宣政 ヴァージョンが最高
僕にとっても、池田宣政 ルパンは初恋の人(笑)ですよ!
最初に読んだのが、『虎の牙』『フロランスの秘密』でして、ご承知でしょうが、ルブランの長編「8・1・3」を、二巻に分けた本で、当時の僕は知らずに後編の方から読み始めるという愚を・・(笑)

>ルパン三世の設定を良く知る人なら嬉しくなるはず。

僕もルパン映画版は、第1作のヒトゲノム、もとい「ルパン対人造人間」と「カリオストロの城」のみで他は観ていません。
山崎貴は、泣かせの演出があざとい気がして、過去作品は好きになれず・・。
どっこい、これは気に入りました!

>ルパン映画シリーズで断然の最高作は「カリオストロの城」

異論の挟みようもありませんが、この作品、カリオストロのみならず、宮崎アニメへのオマージュだらけですよね?
レティシア嬢の面立ちはクラリスを彷彿とさせるし、プロフェッサーの記述にもある飛行機(飛行艇)は過去の宮崎作品の重要なアイテムになっている。
極めつけは、クライマックスに登場する重力を操る“物体”が『天空の城ラピュタ』の飛行石では?といった具合に・・。

ところで、シリーズ初の全編CGですが、最初こそ違和感らしきものがあれど、慣れればいいではないですか(笑)
2次元アニメよりもかなり人間化したこのキャラであれば、ハードルの高い高い実写化(過去2作品は主要キャストが評判悪すぎでして)も行けるのではと思い、僕なりにキャスティングしてみたんですが・・。

ルパン    妻夫木聡 またはニコラス・ホルト
次元大介   ライアン・ゴスリング
石川五右衛門 ジュード・ロゥ または              ジェームズ・マカヴォイ

銭形警部   クリス・プラット

峰不二子   シャーリーズ・セロン またはケイト・ベッキンセール

アニメ実写化で必ずあるアニメファンの総スカンの原因は、原作に似ているか否かではなく、二次元の人物に命を吹き込む日本の声優のあまりにも完璧な演技と、俳優のそれを比べてしまうからでしょう。その意味で芸達者な人を選びました。
浅野佑都
2020年10月08日 22:17
>山崎監督の話では1960年代後半の設定ということだが

「カリオストロの城」も、1968年の出来事らしいですから、時系列でいっても同じくらいになりますね。
浅野佑都
2020年10月09日 10:53
肝心のクラリス役ですが・・。

昨今は、社会的情勢がアレですから、強くてカッコいい女優ばかりで(笑)
夢の映画館ならば、10代のシアーシャ・ローナンでいけると思いますが・・。
ポリコレに敬意を表して、可憐な雰囲気のナオミ・スコットにオファーはどうですかね?
浅野佑都
2020年10月09日 11:20
「813」でなく「虎の牙」でしたね!
フランス革命時から存在している家の秘密の通路からの脱出とか、似た設定があったもので・・。
オカピー
2020年10月09日 18:38
浅野佑都さん、こんにちは。

>最初に読んだのが、『虎の牙』『フロランスの秘密』でして、ご承知でしょうが、
>「813」でなく「虎の牙」でしたね!

ご承知です(笑)。
僕は多分「奇岩城」「怪盗紳士」の順番だと思います。「虎の牙」二作も好きだったなあ。
「七つ星の謎」(「カリオストロ伯爵夫人」)もお気に入り。

ポプラ社版では南洋一郎版は物足りないので、池田宣政版ルパン’中古ですらなかなか手に入らない)を再出版させないといけないでしょう! リクエストを出しましょう。

>僕なりにキャスティングしてみたんですが・・。

かなり現実的な幻想映画館という感じでしょうか。
ルパン以外の日本人役は、声優との比較がされる為に日本人ではハードルが高い?

僕は、正に幻想映画館らしく、ルパンには実際にハーフでもある若い時代の岡田真澄で行きましょう。演技力は保証の限りではありませんが(笑)

>肝心のクラリス役ですが・・。
>可憐な雰囲気のナオミ・スコットにオファーはどうですかね?

現在のフランス系よりは英国系のほうが、ものほんのルパンを含めて、ふさわしい気がしますね。僕好みの清潔そうな美人が多い。
 アルセーヌの妻の方のクラリスには、フランス美人ヴィルジニー・ルドワイヤンが感じだなあ、という印象を、彼女を初めて見た時に思いました。今見ると現代的すぎる気もするので、クラシックな香りもするルーニー・マーラで観たい。勿論今よりぐっと若い時の彼女ですが。
浅野佑都
2020年10月10日 12:33
>ヴィルジニー・ルドワイヤンが感じだなあ

「8人の女たち」の彼女は可憐でした!横顔が特に良いんですよね・・。確かに現代の感じがしますね。

>ルーニー・マーラ

おお、彼女を忘れていましたね!
しかし、そんな年齢でしたか・・ルーニー・マーラは。西洋女性としては、幼い面差しなので、クラリスにピッタリじゃん(笑)と思いましたよ。。
ですが、バタイユのいうところの、聖女の持つエロティシズムの業の深さみたいなのもその気になれば出せる女優ですから・・。、
どんなクラリスになるのか(笑)
浅野佑都
2020年10月10日 12:46
 アニメの方では「可愛い顔をして もう男を引き込んだか・・カリオストロの血は争えんな」
という悪者伯爵の台詞もあったので、むしろそっちのほうがいいかももしれません。
オカピー
2020年10月10日 21:53
浅野佑都さん、こんにちは。

>「8人の女たち」の彼女は可憐でした!

よくぞ思い出してくれました。
映画も、フランス的なエスプリが爆発する傑作。もうすぐ20年経つので、また観ても良い時期ですなあ。

>>ルーニー・マーラ
>アニメの方では「可愛い顔をして もう男を引き込んだか・・カリオストロの血は争えんな」という悪者伯爵の台詞もあったので、
>むしろそっちのほうがいいかももしれません。

段々夢の世界に入ってきました(笑)。