映画評「初恋」(2019年)

☆☆☆(6点/10点満点中)
2019年日本映画 監督・三池崇史
ネタバレあり

WOWOWが三池崇史の小特集をしている。任侠絡みの映画は好まないので、古い任侠の映画は無視し、その路線ではあるが新作の本作だけ観る。「初恋」という任侠絡みの映画とは思えないタイトルが興味をそそる。

ボクサーの窪田正孝がちょっとしたパンチでKO負けする。病院で脳腫瘍と宣告され、茫然自失として町を彷徨っているうち、中年男・大森南朋に追われる美少女・小西桜子を発見、追いかける男を殴って昏倒させる。この男は、若いヤクザの染谷将太とつるんで、借金を背負った父親から売られ麻薬漬けにされた少女を利用し、中国マフィアに渡す麻薬をピンハネして大儲けを企む汚職刑事である。
 染谷は口塞ぎの為、少女を監禁しているチンピラ三浦貴大を殺し、彼の死を知って逆上するその情婦ベッキーをも抹殺しようと企む。が、彼女の生命力は抜群で睡眠中の焼死の難さえ逃れ、諸悪の根源が染谷にあると組に連絡する。
 染谷は大森刑事と一緒に、スマホの機能を使って少女の実家に向かう窪田君たちを追う。ピンハネに気づいた中国マフィア側も犯人を少女と思い込んで追う。ピンハネを知った組の若頭・内野聖陽以下が染谷たちを追う。
 かくして、追手の三組が路上で衝突し、少女たちを巻き込んで、ホームセンターでの殺し合いに発展する。

3つ以上のグループが少しずつ違う各々の目的で図らずも一つ所で遭遇し派手は出入りになるというのは、欧米映画に類似の作品がちらほらあり、一々思い出すのも面倒くさいが、店や倉庫での激しい対決場面は、近作であるだけに「イコライザー」が直線的に頭を過ぎる。
 このように、新機軸とは言えなくても、欲が絡み合って波乱が波乱を呼ぶといった展開は怒涛と言っても良く、強引な見せ方で押し切って案外退屈させない。全体として低調な日本の映画にこういう馬力で見せる犯罪映画が増えて来たのは歓迎すべき傾向なのかもしれない。一部で言われる“だから日本映画は云々” という意見は案外思い込みによるところが大きいのではないか。

但し、本作については人体損壊の激しさには閉口させられる。笑いではとても相殺されない。
 しかるに、本作の面白味は、それ以上に、ヤクザ同士の争いに巻き込まれ型サスペンスの要素を持ち込んだことで、巻き込まれたことが実父にひどい目に遭って後遺症の幻影に苦しみ麻薬中毒で生きる気力を失っていた少女に恋心の芽生えをもたらすという、相反する要素を抱き合わせたところにある。頗る上手く行ったと言えないまでも後味はよろし。ヒロインの中毒症状の描写は甘いだろう。

「初恋」と言えば、少年時代はツルゲーネフ、中年以降は村下孝蔵、を思い出す僕であります。

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