映画評「映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2017年日本映画 監督・石井裕也
ネタバレあり

最果タヒという女性詩人の詩集の映画化という変わり種だが、勿論叙事詩でもない詩集から映画ができるわけもなく、脚本を書いた石井裕也監督が、その詩編を生かして拵えた一種の恋愛映画である。

ガールズ・バーにも勤める看護婦・石橋静河が、優等生だったが目が悪いために今は建設現場で働く池松壮亮と客の一人として出会う。彼女は彼の先輩である松田龍平と交際を始めるが、彼は突然死んでしまう。
 そうでなくとも街角や病院で偶然にもよく会う二人は、かくして話友達のように意図的に逢うようになる。アウトサイダーを気取る厭世的な二人は似た者同士として気の合うところが多く、二人がよく喋る時は不安や恐怖が心に巣食っている時で、常に死を頂点とした何かが起きるというネガティヴなイメージに苛まれている。
 気が合うとは言っても彼女がひどく白けた感覚で世間を観る為に常に仲良く出来るわけではないが、周囲で死者が出たり退職する者が続く中、二人は口では文句を言いつつも次第に心の寄り添える相手であることを確認していく。

この二人のように感受性の強い者や弱者にとって生きているのに辟易するような世の中にあって欠かせない他人との絆を描くことは、畢竟、二人が厭世観からやや脱却していく過程を描く内容となるわけで、そこに希望を感じさせることになる。
 それをヒロインが否定しきっている恋愛を通して厭世観を遠ざけていく辺り人間賛歌として観ることができ、少なからず感動的。

石井監督の生み出す台詞には相変わらず親しめないところがある一方で、今までの作品に比べると力みが表に出て来ず好もしい。東京の情景を多く撮り込み、ある意味町を主人公としているような扱いが、そうした効果を生んだのかもしれない。

TVドラマ版があるわけでもないのに、タイトルに“映画”が付くのは珍しい。但し、映画本編のタイトル表示には“映画”は付いていないようであった。どういうこと?

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