映画評「閉鎖病棟-それぞれの朝-」

☆☆★(5点/10点満点中)
2019年日本映画 監督・平山秀幸
ネタバレあり

精神科医でもある帚木蓬生の「閉鎖病棟」の再映画化。2001年に製作された「いのちの海 Closed Ward」が一回目の映画化だそうだ。

Wikipediaによれば、2006年頃からお話は始まる。
 不倫現場を見た妻と役人、認知症の母親を殺した秀丸(笑福亭鶴瓶)の絞死刑が執行されるが処刑は失敗、前代未聞のことに関係者は当惑し、“世間が騒ぐ” として精神科病棟へ送ることにする。
 ここで少し疑問が湧くのは、日本では死刑は関係者以外誰にも告知せずに行われ、その後公表等が為されるのではなかったか、ということ。そうであれば世間が騒ぐことはない。正確には解らないが、一応疑問が湧いたので書いておく。

やがて、処刑失敗の後遺症で下半身不随になった秀丸が陶芸に精を出している精神科病棟に、母親を連れられた19歳くらいの少女・由紀(小松菜奈)がやって来る。母親は再婚した義父に強姦されて口を利かなくなった娘を持て余して預けることにしたらしい。
 普段は全く普通だが時々幻聴が聞える発作を起こす三十代の青年・中弥(綾野剛)は外に出て買い物をし、病棟の患者たちに売っている。病院側も大目に見ている。

本作の核を成すのがこの三人である。

ここに人と交わらず性悪な暴力傾向のある男(渋川清彦)がいて、秀丸に頼まれて陶芸小屋に入った由紀を強姦する。由紀は失踪する。事件を知った秀丸は車椅子の彼に油断した犯人を刺殺し、逮捕される。妹夫婦により施設に送られそうな老母を心配する中弥は退院する。
 やがて裁判が始まり、そこへ由紀が証人として現れる。

IMDbの投票結果が 5.2 と極めて低いのは、恐らく患者の余りに高い自由度にあるのではないかと想像する。
 死刑の失敗にしても、殺人犯である秀丸が刃物を持てるという自由すぎる状況にしても、人間の変化を映し出す為の実験ツール(一種の寓話)と考えられるので、これが問題なのかどうかは映画におけるリアリティーに関する考えにより左右されるだろう。僕はその点は割合拘らない方なので、これについては大きなマイナス点と考えない。

“それぞれの朝” というサブタイトルと序盤の展開から患者たちの群像劇として進むのかと思いきや、訳ありの三人の絆を描く物語に収斂していくことになる。この絆があるが故に三人はそれぞれに成長する。絆が成長を促すのである。特に、世間から姿を隠していた由紀は自分の代りに殺人を犯した秀丸に恩を感じて証人を買って出る。その証言を聞いて今度は秀丸が文字通り車椅子から立ち上がろうとする。

それなりに感動的ではあるが、絵に描いたような成長譚なので、ご贔屓平山秀幸監督の作品としては感心するわけには行かない。

WOWOWの邦画重視が益々強まっているので、連日邦画の映画評となっています。おかげで邦画の再鑑賞がしづらくなっている。良くないねえ。

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